動脈瘤性クモ膜下出血の患者に対する血管内コイル塞栓術と脳神経外科的クリッピング術の比較

レビューの論点
クモ膜下出血後の血管内コイル塞栓術後の転帰を脳神経外科的クリッピング術後の転帰と比較した。

背景
脳表面の膜の下に出血したものをクモ膜下出血という。出血は通常、脳に血液を送る動脈の弱い部分が破れることで起こる。弱い場所は小さい風船のようになっており、動脈瘤と呼ぶ。動脈瘤に由来するくも膜下出血は一般的に予後が悪い。3か月以内に3分の1が死亡し、5人に1人が歩行、着替え、入浴、身の回りの世話等の日常生活が他人に依存したままである。くも膜下出血のリスクの一つに再出血がある。これを防ぐために2つの手法がある。手術により動脈瘤の頸部をクリッピングする(クリップで頸部をつまんで血流を遮断する)方法と血管内コイルで血管の内側から動脈瘤をふさぐ方法である。

研究の特徴
2018年3月、クモ膜下出血に対する血管内コイル塞栓術と脳神経外科的クリッピング術を比較したランダム化比較試験(RCT、対象者をランダムに2つ以上の治療グループの1つに振り分ける)を検索した。1件の新しいRCTとすでに実施されたRCTの結果から、2458人の参加者を含めた4件のRCTを含めることができた。

主な結果
RCTの結果から両方の治療が可能な場合は脳神経外科的クリッピング術よりも血管内コイル塞栓術の方が生存率や日常生活が自立している人の割合が高いことが示された。再出血のリスクは血管内コイル塞栓術で治療された人の方が高かった。このエビデンスは主に1件の大規模な試験から得られたものである。

エビデンスの質
動脈瘤の状態が比較的良好で、脳神経外科的クリッピング術と血管内治療の両方が適した治療であると考えられている人に対する治療の指針として十分なエビデンスがあると判断された。臨床的に状態の悪い人に対する治療指針に直接使えるような信頼性の高い試験のエビデンスはない。

訳注: 

《実施組織》久保田純平、冨成麻帆 翻訳[2022.05.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003085.pub3》

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