リスペリドンおよびオランザピンは攻撃性の緩和に有用であり、リスペリドンは精神病を軽減するが、両薬剤は重篤な脳血管有害事象および錐体外路症状を伴うことがエビデンスから示唆される。効果がわずかであるにもかかわらず、有害事象が有意に増加していることから、リスペリドンもオランザピンも、著しいリスクや重度の苦悩がない限り、攻撃性または精神病を伴う認知症患者の治療にルーチンで使用すべきではないことが追認された。今回検討した試験から得られたデータは不十分であったが、認知症の人の行動症状の治療に非定型神経抑制薬を用いた17件のプラセボ比較試験について米国食品医薬品局が行ったメタアナリシスによれば、死亡率が有意に増加することが示唆された(OR 1.7)。
過半数の認知症の人には、ある時点で攻撃性、興奮または精神病性障害が発生する。最近5年間に、こうした症状を治療する非定型抗精神病薬の試験が多数行われており、均衡を保った方法でエビデンスを評価するにはシステマティック・レビューが必要である。
アルツハイマー病に罹患した人の攻撃性、興奮および精神病性障害の治療に非定型抗精神病薬を使用することが、エビデンスによって裏付けられているかどうかを判定する。
オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、クロザピン、アミスルプリド、セルチンドール、ゾテピン、アリピプラゾール、ジプラシドンを検索用語に用いて、2004年12月7日にCochrane Dementia and Cognitive Improvement GroupのSpecialized Register最新更新版を検索し、試験を同定した。このRegisterには、あらゆる主要医療データベースおよび多数の進行中臨床試験のデータベースからの論文が掲載されており、定期的に更新されている。
認知症および、精神病性障害および/または攻撃性を評価したランダム化プラセボ比較試験。割りつけが隠蔵されている試験を選択した。
1.選択した試験から、2名のレビューアがデータを抽出した。 2.可能な場合はデータを統合し、適切な統計手法を用いて解析した。 3.非定型抗精神病薬で治療した患者を解析に含め、プラセボと比較した。
非定型抗精神病薬を用いた16件のプラセボ比較試験が完了していたが、メタアナリシスに寄与し得る十分なデータが報告されていたのは9件のみであり、ピア・レビュー雑誌に完全な形で発行されていたのは5件のみであった。選択基準に適合するアミスルプリド、セルチンドールおよびゾテピンの試験は同定されなかった。 選択した試験から以下の結果が導き出された。 1.リスペリドンおよびオランザピンによる治療では、プラセボに比べ攻撃性に有意な改善が認められた。 2.リスペリドンで治療した患者には、精神病性障害に有意な改善が認められた。 3.リスペリドンおよびオランザピンで治療した患者は、重篤な脳血管有害事象(脳卒中など)、錐体外路副作用および他の重大な有害アウトカムの発現率が有意に高かった。 4.リスペリドン(2mg)およびオランザピン(5~10mg)で治療した患者には、脱落者が有意に多かった。 5.認知機能に対する影響を検討するにはデータが不十分であった。