リスクのある小児では、治療中に抗菌薬を1日1回または2回投与することでAOMの罹患率は減少すると考えられる。同様の患者集団では、年間あたりのAOMエピソード数は約3回から約1.5回に減少すると考えられる。高リスクの小児では絶対的利益がより大きいと考えられる。これらの結論は、感度分析に影響されなかった。
急性中耳炎(AOM)は小児によくみられる疾患で、たびたび発生し疼痛を伴う場合がある。AOMは鼓膜穿孔を伴う場合があり、慢性化膿性中耳炎(CSOM)に進行する可能性がある。
あらゆるAOM、穿孔を伴うAOM、およびCSOMの予防における抗菌薬長期投与(6週間以上)の有効性を判定すること。
Acute Respiratory Infections Group's Specialised Registerを含むCochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)(コクラン・ライブラリ 2010年、Issue 3)、MEDLINE(1996年1月~2010年7月第4週)、OLD MEDLINE(1950年~1965年)、およびEMBASE(1990年~2010年8月)を検索した。
AOM、穿孔を伴うAOM、またはCSOMの予防を目的とした抗菌薬長期投与とプラセボ投与または無治療を比較したランダム化比較試験。
2名のレビューアが別々に以下のデータを抽出した。AOM、AOMのエピソード、AOMの再発、疾患のエピソード、副作用、抗菌薬抵抗性、および介入終了時のアウトカム(あらゆるAOM)、および介入終了後のアウトカム(あらゆるAOM)。二値アウトカムについては、要約リスク比(固定効果モデル及びランダム効果モデル)を算出した。割合で表すアウトカムについては、要約罹患率比を算出した。
17件の研究(小児1,586例)が該当した。全研究でAOMリスクの高い小児が登録されており、7件の研究で小児に中耳炎を発症する傾向がみられた。大部分の研究は質が高く、大半(16件の研究)で本レビューの主要アウトカムに関するデータが報告されていた。1件の研究で穿孔またはCSOMを伴うAOMについて報告されていた。抗菌薬の長期投与でAOMのあらゆるエピソード[14件の研究、小児1,461例、リスク比(RR)0.65、95%CI 0.53~0.79、ランダム効果モデル]およびAOMのエピソード数[13件の研究、小児1,327例、罹患率比(IRR)0.51、95%CI 0.39~0.66、ランダム効果モデル]が減少した。治療中にAOMを発症する小児1例を予防するためには、小児約5例の長期投与が必要と考えられる。抗菌薬は小児1例あたり12ヵ月間の治療につき1.5回のAOMのエピソードを予防した。統計学的異質性を調査した。抗菌薬の長期投与による有害事象の有意な増加は認められなかった(12件の研究、小児817例、RR 1.99、95%CI 0.25~15.89、ランダム効果モデル)。