進行癌患者にしばしばみられる体重減少を伴う症候群の管理において、魚油の服用を支持するにはエビデンスが不十分であった。進行癌がある人の多くは、つらい体重減少を伴う症候群を発症する。これまで、関連症状の治療は困難とされてきた。最近では、オメガ3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)を含む魚油の服用など、体重減少を食い止めて体重増加を促進する新規のアプローチがある。本レビューの試験により、進行膵癌により体重が減少した人では、EPAサプリメントはEPA以外のサプリメントと比較して有益ではないことがわかった。しかし、他の癌種の患者における使用について結論を出すには、エビデンスが不十分であった。
経口投与のEPAがプラセボよりも有効であることを立証するにはデータが不十分であった。食欲増進剤(酢酸メゲストロール)の存在下で、EPAおよび蛋白エネルギーの併用補充と蛋白エネルギー単独補充(EPAなし)の比較では、進行癌患者にしばしばみられる悪液質症候群に伴う症状をEPAが改善することを示すエビデンスはなかった。
癌悪液質はつらい体重減少を伴う症候群で、進行癌患者によくみられる。癌悪液質により生活の質が低下し、生存期間が短縮する。エイコサペンタエン酸(EPA)はある種の魚に含まれる長鎖多価不飽和脂肪酸で、体重減少の抑制、体重増加の促進、生存期間の延長を目的として癌悪液質患者に使用されている。
進行癌患者の悪液質症候群に伴う症状の緩和におけるEPAの有効性と安全性を評価すること。
電子データベースを広範囲に検索して研究を探した。選択したジャーナルや参考文献リストを手作業で検索し、治験責任医師、製造業者、専門家に連絡を取った。直近の電子検索は2005年2月に実施した。
本レビューでは、進行癌患者で悪液質と診断された者または5%以上の体重減少を自己報告した者に対し、経口投与したEPAとプラセボまたはコントロールを比較したランダム化比較試験を選択した。
2名のレビュー著者がそれぞれ試験の方法論的な質を評価し、データを抽出した。
5件の試験(587例)が選択基準を満たした。3件の試験では異なる用量のEPAとプラセボを、栄養状態と有害事象の2つのアウトカムについて比較し、このうち2件が比較可能であった。また、2件の試験では、異なる用量のEPAと同等の実薬コントロールを比較した。体重、生活の質、有害事象のアウトカムについて、これら2件の試験は比較可能であった。EPAの至適用量を決定するにはデータが不十分であった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.3]
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