双子の早産を予防するためにβ刺激薬(子宮の収縮を抑える薬)をルーチンに服用することを支持するランダム化比較試験のエビデンスは不十分である。
赤ちゃんが生まれるのが早過ぎると、健康状態に問題が生じ、時には重症化して、まれに赤ちゃんが死んでしまうこともある。これは、肺や他の臓器が十分に成熟していないことが原因かもしれない。また、早産に関連して、脳性麻痺などの長期的な障害が生じる可能性がある。双子の場合、早産になりやすく、子宮内での発育制限もあり、これらの問題を抱える可能性が高い。子宮の収縮を抑える薬(β刺激薬)は、母親が単胎の赤ちゃんを妊娠している場合に早産を遅らせることがわかっている。このレビューでは、特定した6件の試験(374例の双胎妊娠)のうち、5件の試験(344例の双胎妊娠)のデータを解析に組み込んだ。その結果、β刺激薬をルーチンに経口投与することを支持するには十分なエビデンスが得られていないことが明らかになった。2件の小規模な研究の結果からは、β刺激薬が早産率を低下させる可能性が示唆されたが、4件の試験の結果からは、妊娠34週未満や37週未満での早産の減少は認められなかった。β刺激薬が、在胎不当過小児(SGA児)の減少や新生児死亡の減少に効果があるというエビデンスは得られなかった。β刺激薬による呼吸窮迫症候群の発症率の差は明らかではなかった。β刺激薬は、母体に動悸などの副作用を引き起こす可能性があるが、レビューに含んだ試験ではその点に関する報告はされていなかった。レビューに組み込んだ試験の参加者数が少なく、アウトカムの発生数も少ないため、エビデンスの質は低い。
試験開始時の妊娠週数は、20~34週であった。試験で使用されたβ刺激薬の種類や用量は様々であり、報告されたアウトカムは不完全で定義も異なっていた。どの試験にも、赤ちゃんの肺の成熟度を改善するために出生前にステロイドを使用したかどうかの記載がなかった。
《実施組織》杉山伸子、小林絵里子 翻訳[2020.09.28]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004733.pub4》