てんかん患者・知的障害患者における非薬理学的介入

てんかんは、てんかん発作時に現れる脳の不随意な活性が特徴となる神経学的な病態である。知的障害患者でのてんかんの発現率は、一般集団と比較して有意に高い。この集団でのてんかんは、多くの場合は抗てんかん薬(AED)に対して反応性が低いことから、罹患率および死亡率が更に高まる。このレビューでは、2件の外科的処置を比較する1件の重要な研究を対象とした。この研究で、前部脳梁離断術(脳梁の一部を切除する手術)と前部側頭葉切除術(側頭葉の一部を切除する手術)の組み合わせは、前部側頭葉切除術単独と比較し、てんかん患者や知的障害患者の生活の質およびIQ検査の成績の改善において効果が高いことが示された。いずれの方法でも、発作コントロールを改善する相対的な有用性について裏付けは得られていない。本レビューの結果、てんかん患者や知的障害患者として非薬理学的介入について検討するランダム化比較試験(RCT)がないことを改めて浮き彫りにしている。この集団での有病率とてんかんの性質を考慮し、知的障害患者での発作および行動結果に対する非薬理学的介入の効果を確認する目的で綿密に設計されたRCTが必要である。しかし、知的障害患者によるRCTを行う前に、知的障害者ではない参加者を対象とするRCTから得られた良質のエビデンスに基づき副作用と有効性を評価するべきである。

著者の結論: 

このレビューから、知的障害患者やてんかん患者で発作や行動治療の結果に対する非薬理学的介入の効果を評価するためには、綿密な設計のランダム化比較試験が必要であることを強調している。

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背景: 

てんかん患者の約30%は薬剤治療に対して病態が難治性のままであり、抗てんかん薬(AED)1剤以上を服用しながらも発作の発現が続く。難治性の患者には、いくつかの非薬理学的介入をAEDと組み合わせるか、またはAEDの代替可能として利用可能である。知的障害患者での発作は、その多くが複雑なものであり、また薬理学的介入に対し難治性である事実を考慮すると、薬理学的介入に対する代替療法または補助薬の有効性を評価するため良質のランダム化比較試験(RCT)が必要であることは明らかである。

このレビューはCochraneLibrary(2007,Issue4)より出版されたオリジナルからの更新版である(Beavis 2007)。

目的: 

てんかん患者および知的障害患者を対象として非薬理学的介入について検討するランダム化比較試験から得られているデータを評価すること。

非薬理学的介入としては、次のようなものがあるが、これに限定されるわけではない。

•外科的処置

•ケトン食などの特殊な食事、またはビタミンおよび葉酸の補給

•認知行動療法(CBT)、脳波(EEG)バイオフィードバック、教育的介入など、患者および患者/保護者のための心理的介入

•ヨガ

•鍼灸

•リラックス療法(音楽療法など)

検索戦略: 

本レビューの最新の更新では、Cochrane Epilepsy Group Specialised Register(2014年8月19日)、CRSOを経由したCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL、2014年8月19日)、MEDLINE(Ovid、1946年~2014年8月19日)およびPsycINFO(EBSCOhost、1887年~2014年8月19日)を検索した。

選択基準: 

てんかん患者および知的障害患者を対象として非薬理学的介入を検討したランダム化比較試験

データ収集と分析: 

2名のレビューアがそれぞれ選択基準を適用し試験のデータを抽出した。

主な結果: 

1件の試験を本レビュー対象とした。2種類の外科的処置を比較した場合、てんかん患者・知的障害患者の生活の質およびIQ検査の成績の改善の点で、前部側頭葉切除術単独と比較し前部側頭葉切除術と脳梁離断術の組み合わせが効果的であった。発作コントロールについては、いずれの介入でも優れた効果を裏付けるエビデンスは認められなかった。本研究はこの類としては唯一の研究であり、全体的なバイアスリスクについては不明であると評価された。前回の更新(2010年12月)では、実施中の1件のRCTが確認されている。研究の著者の確認で、2015年末までに論文投稿を目標としていることから、本研究(Bjurulf 2008)は現在のレビューの対象外とした。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD005502 Pub3

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