経直腸的前立腺生検のための抗菌薬予防投与

著者の結論: 

抗菌薬の予防投与は、TRPB後の感染合併症を予防するのに有効である。長期(3日間)の抗菌薬投与が短期投与(1日間)よりも優れていること、あるいは反復投与が単回投与よりも優れていることを確認できる確定的なデータは認められない。

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背景: 

経直腸的前立腺生検(TRPB)は、前立腺癌の組織診断のための組織採取に用いられる方法として十分に確立されている。TRPBが安全な方法であると一般に考えられているのは事実であるが、TRPBには、外傷性の合併症や、無症候性細菌尿(尿中に細菌が存在する)、尿路感染症(UTI)、一過性の菌血症(血中に細菌が存在する)、発熱エピソード、敗血症(血中に病原微生物やそれらの毒素が存在する)など外傷性および感染性の合併症が起きる場合がある。TRPB後の感染合併症はよく知られているが、ルーチンの予防的抗菌薬投与の必要性、有効性、有害作用については不確実性があり、明確な標準化には至っていない。

目的: 

TRPBのための予防的抗菌薬投与の有効性と有害作用を評価すること。

検索戦略: 

MEDLINE、EMBASE、LILACS、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)といった主要な電子データベースを検索した。専門家に相談を行うとともに、関連性のある論文の参照文献を調べた。

選択基準: 

TRPBを受けた男性を対象に予防的抗菌薬投与をプラセボまたは非投与と比較しているすべてのランダム化比較試験(RCT)、また、異なる用量、投与経路、投与頻度および投与期間で抗菌薬を別の抗菌薬と比較しているすべてのRCTを選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューア(ELZ、OACC)が別々に、対象となる試験を選択し、研究データを抽出した。意見の相違があった場合は、第三者(NRNJ)によって解決した。

主な結果: 

全体として、3,500件を超える参照文献を検討し、合計3,599例の患者を対象とする19件の原著報告を選択した。抗菌薬とプラセボ/非投与との比較を解析している試験が9件あり、すべてのアウトカムは抗菌薬投与に有意に有利であり(P < 0.05)(I2 = 0%)、細菌尿のリスク比(RR)は0.25[95%信頼区間(CI)0.15~0.42]、菌血症のRRは0.67(95%CI 0.49~0.92)、発熱のRRは0.39(95%CI 0.23~0.64)、尿路感染症のRRは0.37(95%CI 0.22~0.62)、入院のRRは0.13(95%CI 0.03~0.55)であった。いくつかのクラスの抗菌薬はTRPBのための予防効果があったが、キノロン系抗菌薬が最もよく解析されており、解析している研究数(5件)も患者数(1,188例)も最多であった。抗菌薬と浣腸の比較については、限られた数の患者を対象にした4件の試験を解析した。群間差はすべてのアウトカムついて有意ではなかった。抗菌薬を抗菌薬と浣腸の併用と比較した場合では、菌血症のリスクのみが抗菌薬と浣腸の併用群において減少していた(RR 0.25、95%CI 0.08~0.75)。7件の試験では短期(1日間)の抗菌薬投与と長期(3日間)の抗菌薬投与を比較し、その効果を報告していた。長期投与は短期投与に比較して細菌尿についてのみ結果が有意に良好であった(RR 2.09、95%CI 1.17~3.73)。単回投与と反復投与との比較については、単回投与で細菌尿のリスクが有意に大きくなっていた(RR 1.98、95%CI 1.18~3.33)。抗菌薬の経口投与と全身投与[筋肉内注射(IM)または静脈内注射(IV)]の比較では、細菌尿、発熱、UTI、入院について有意な群間差はなかった。

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