レビューの論点
虚血性脳卒中後の回復の改善において、幹細胞移植は従来の治療と比べてより安全でより効果的なのだろうか。
背景
脳卒中は世界中で死や障害の主要な原因となっていて、非常に多くの医療コストや社会コストがかかっている。経静脈的栓溶解療法(薬物を用いた、血管内で形成された血栓の溶解)や血管内機械的血栓除去術(血栓の外科的除去)のような血管再開通を目的とした治療は、脳卒中が発症してから数時間以内の限られた患者に対してのみ適応となる。幹細胞移植(障害された神経組織の救護もしくは置換し得る細胞を注射する)は予備的研究において虚血性脳卒中の治療として安全かつ有効である可能性が示された。しかしながら、人間の神経組織への移植に関する情報は十分ではない。このレビューは、この主題に関する以前のコクランレビュー(Boncoraglio 2010)を更新したものである。
試験の特性
このレビューでは、虚血性脳卒中を発症した成人(発症からの経過時間を問わない)を集めた無作為試験を含めた。また、あらゆる種類の幹細胞や投与方法の試験をレビューに含めた。
主な結果
7つの無作為試験を同定し、401人の参加者を対象とした。全体的に、幹細胞移植は神経学的障害の減少に関連していたが、従来の治療法と比較して、より良い機能的結果には関連しなかった。安全上の懸念は提起されなかった。
エビデンスの確実性
レビューに含まれる研究におけるバイアスのリスク、結果の精確性の欠如、試験のデザインの差異のため、エビデンスの確実性は低いもしくは非常に低いものであった。今後、よりよくデザインされたランダム化比較試験が必要である。
《実施組織》岩見謙太朗 翻訳、土方保和 監訳[2019.10.04]
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《CD007231.pub3》