羊水混濁(MSAF)は、胎児の大腸から老廃物(胎便)が母親の羊水腔に排出された結果起こる。過期産になるとその発症率が増える。羊水混濁をきたした妊婦は、細菌感染による胎児を包む膜の炎症(絨毛膜羊膜炎)、産後の子宮内膜の炎症(子宮内膜炎:産褥熱)などの母体合併症や、新生児の敗血症や新生児集中治療室(NICU)への入院などの新生児合併症を発症する可能性が高くなる。胎児のストレスや低酸素状態が引き金となって、胎児の呼吸が荒くなり、その結果、胎便を誤嚥することがある(訳注:胎便吸引症候群のこと)。
確認された2件のランダム化比較試験(362人の女性を含む)によると、予防的な抗生剤の投与は、羊水混濁をきたした女性における羊膜内感染のリスクを低減する可能性があることがわかった(中程度の質のエビデンス)。抗生物質の使用は、新生児敗血症(質の低いエビデンス)、NICUへの入院(質の低いエビデンス)、産後の子宮内膜炎(質の低いエビデンス)を明確に減少させるものではなかった。これらの問題を検討するには、より多くの羊水混濁をきたした妊婦を対象とした研究が必要である。
《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子翻訳[2021.10.06]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007772.pub3》