慢性腎臓病(CKD)患者は腎機能が徐々に低下する。Cordyceps (Cordyceps sinensis)は冬虫夏草とも呼ばれ、中医学でCKDの治療に広く用いられている。本レビューは、CordycepsがCKD患者に安全かつ有効であるかどうかを検証するために実施した。
2014年4月までに出版された文献を検索し、中国で1746名のCKD患者に治療の一部としてCordycepsを投与した22件の試験のエビデンスを評価した。
従来の西洋医学による治療にCordyceps製剤を追加した場合、腎機能の改善や合併症対策に有用である可能性を示唆するエビデンスが得られた。しかし、エビデンスの質は低く、CKD患者に対するCordycepsについて、最終的な結論を導くことはできなかった。
従来法の補助療法としてのCordyceps製剤は血清クレアチニンを低下させ、クレアチニンクリアランスを改善し、蛋白尿を軽減させ、ヘモグロビンや血清アルブミンの上昇など、CKDに関連した合併症を軽減させる可能性が示された。しかし、エビデンスの質が低いため、最終的な結論を下すことはできなかった。
Cordyceps sinensis (Cordyceps, Dong Chong Xia Cao)は冬虫夏草としても知られる中薬で、慢性腎臓病(CKD)の治療に用いる中薬の最も一般的な原料である。
本レビューは、CKD患者に対するCordyceps sinensisの治療効果および有害作用の可能性の評価を目的としている。
Trials' Search Co-ordinatorを介して、本レビューに関連のある検索語を用いてCochrane Renal Group's Specialised Registerを2014年4月14日まで検索した。また、CINAHL、AMED、Current Controlled Trials、OpenSIGLEおよびCBM、CMCC、TCMLARS、Chinese Dissertation Database、CMAC、Index to Chinese Periodical Literatureなどの中国のデータベースも検索した。
Cordycepsまたはその製剤をプラセボ、無治療または従来の治療と比較したランダム化試験または準ランダム化試験を本レビューの対象とした。
2名の著者がそれぞれデータの質を評価し、データを抽出した。変量効果モデルを用いて統計解析を実施し、2値データの結果はリスク比(RR)、連続データの結果は平均差(MD)および95%信頼区間(CI)で示した。
1746名を対象とした22件の試験を組み入れた。透析を受けていないCKD患者において、Cordyceps製剤は血清クレアチニンを有意に低下させ(14試験、参加者数987名)(MD -60.76 μmol/L, 95% CI -85.82〜-35.71)、クレアチニンクリアランスを改善し(6試験、参加者数362名)(MD 9.22 mL/分, 95% CI 3.10 〜15.34)、24時間蛋白尿を軽減させた(4試験、参加者数211名)(MD -0.15 g/24時間, 95% CI -0.24〜-0.05)。しかし、報告は完全ではなく方法論に欠陥があったため、バイアスのリスクは4試験では高く、18試験では不明と評価した。このため、これらの結果は慎重に解釈する必要がある。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.20]
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