選択した4件の試験のいずれにおいても生殖アウトカムに対する効果のエビデンスはなかった。ARTを受ける女性を対象とした子宮内膜腫治療のRCTが更に必要である。
子宮内膜腫は卵巣にできる子宮内膜症の嚢胞である。人工生殖技術(ART)サイクルには卵巣からの卵母細胞採取が含まれるので、子宮内膜腫がARTのアウトカムに悪影響を及ぼしうる。
子宮内膜腫の女性において、ARTサイクルを受ける前に、生殖アウトカムを改善するための手術、内科的治療、併用療法、あるいは無治療で有効性と安全性を検討する。
レビューアがCochrane Menstrual Disorders and Subfertility Group Specialised Register of trials、CENTRAL(コクラン・ライブラリ)、EMBASE、MEDLINE、PubMed、PsycINFO、CINAHL、DARE、進行中や登録済みの試験登録、引用索引、ISI Web of Knowledgeの会議抄録、Clinical Study Results、OpenSIGLEを検索した(2010年7月)。Fertility and Sterilityをハンドサーチした(2008年から2010年)。
ART前の子宮内膜腫に対するあらゆる内科的治療、外科的治療、併用療法、または待機的治療のランダム化比較試験(RCT)。
2人のレビューアが独自に試験を同定し、バイアスのリスクを評価した。選択に適すると思われる試験の著者に追加情報を得るため連絡を取った。アウトカムはPetoオッズ比と平均差(MD)として表した。
11件の試験を同定した。このうち7件を除外し、計312例の参加者が対象となる4件を選択した。出生アウトカムを報告した試験はなかった。1件の試験ではゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとGnRHアンタゴニストが比較された。臨床的妊娠率(CPR)に差があるというエビデンスはなかったものの、成熟卵母細胞採取数(NMOR)はGnRHアゴニストの方が多く(MD -1.60、95%CI -2.44~-0.76)、卵巣反応も良好であった(ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)注射日におけるエストラジオール(E2)濃度)(MD -456.30、95%CI -896.06~-16.54)。手術(吸引または嚢胞切除)と待機的治療(EM)の比較では、どちらかの方法を用いた場合で臨床的妊娠に有利となるエビデンスは認められなかった。EMと比較して、吸引はNMORに関連性が強く(MD 0.50、95%CI 0.02~0.98)、卵巣反応も良好であった(hCG注射日のE2濃度)(MD 685.3、95%CI 464.50~906.10)。嚢胞切除では排卵誘発(COH)に対する卵巣反応が不良であった(MD -510.00、95%CI -676.62~-343.38);EMと比較した場合、NMORに影響を与えるというエビデンスはなかった。吸引と嚢胞切除の比較では、CPRやNMORに差があるというエビデンスが示されなかった。