慢性B型感染ウイルス(HBV)感染症は世界中で死亡、罹病および経済的負担の大きな原因となっている。現在承認されている治療法は有効であるが、治療に対する反応は十分ではない。患者はウイルス耐性を生じるリスクが高く、重篤な有害事象を発現する可能性がある。本レビューの目的は、慢性HBV感染症患者に対するコミカンソウ種の有益性および有害性を評価することであった。コミカンソウ種は安全で、HBV感染症患者におけるウイルスマーカーのクリアランスに有効であると考えられる。しかし、本レビューの対象試験はいずれも方法の質が低く、バイアスのリスクが高いため、大多数の比較においてランダム誤差のリスクが認められた。さらに、すべての解析で顕著な異質性が認められた。したがって、コミカンソウ種の効果を確定するには、臨床での使用を考慮する前に、バイアスのリスクが低く、サンプル・サイズの大きいランダム化比較試験を実施すべきである。
慢性HBV感染症患者に対し、コミカンソウ種がプラセボと比較して有益であるという、説得力のあるエビデンスは得られていない。コミカンソウ種と抗ウイルス薬の併用は抗ウイルス薬単独の場合よりも有効であるかもしれない。しかし、異質性、系統誤差およびランダム誤差が認められるため、結果の妥当性には疑問が残る。これらの知見を裏付けるには、サンプル・サイズが大きくバイアスのリスクが低い臨床試験が必要である。今後の試験ではコミカンソウの具体的な種名を報告し、用量探索デザインを採用すべきである。
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染症に対してコミカンソウ種(Phyllanthus)が臨床試験で評価されているが、その有用性について一貫した結論は出ていない。
慢性HBV感染症患者に対するコミカンソウ種の有益性および有害性を評価すること。
Cochrane Hepato-Biliary Gorup Controlled Trials Register、コクラン・ライブラリのCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、Science Citation Index Expanded、Chinese Biomedical CD Database、China Network Knowledge Information、Chinese Science Journal Database、TCM OnlineおよびWanfang Databaseを検索した。中国語の学会抄録集のハンドサーチを行った。すべての検索は2010年10月まで行った。
慢性HBV感染症患者に対し、コミカンソウ種をプラセボまたは介入なしと比較したランダム化比較試験。すべての比較対照群が同一の共介入を受けている場合は共介入を許可した。盲検化の有無、出版形態および言語に関係なく試験を組み入れた。
2名のレビュー著者がそれぞれ試験を選択し、データを抽出した。二値データの統計解析にはRevManソフトウェアを使用し、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)で表した。系統誤差を制御するため、バイアスのリスクを評価した。ランダム誤差を制御するため、逐次解析を用いた。
患者数1326名の計16件の試験を組み入れた。参加者42名の1件の試験ではコミカンソウ種をプラセボと比較した。この試験では治療終了後(RR 0.9; 95% CI 0.73〜1.25)またはフォローアップ後(RR 1.00; 95% CI 0.63〜1.60)のB型肝炎e抗原(HBeAg)のセロコンバージョンに有意差は認められなかった。他のアウトカムは評価できなかった。15件の試験では、コミカンソウ種とインターフェロンアルファ、ラミブジン、アデホビルピボキシル、サイモシン、ビダラビンなどの抗ウイルス薬または通常治療との併用を同一の抗ウイルス薬単独投与と比較した。コミカンソウ種は血清HBV DNA(RR 0.69; 95% CI 0.52〜0.91, P = 0.008; I2 = 71%)、血清HbeAg(RR 0.70; 95% CI 0.60〜0.81, P < 0.00001; I2 = 68%)およびHbeAgセロコンバージョン(RR 0.77; 95% CI 0.63〜0.92, P = 0.005; I2 = 78%)に対し有意な影響を与えたが、異質性が高かった。血清HBV DNAに関する結果は逐次解析による裏付けが得られなかった。いずれの試験でも死亡率、B型肝炎関連罹病率、生活の質および肝組織所見が報告されていなかった。2件の試験でのみ有害事象が報告されており、発現数に有意差は認められなかった。重篤な有害事象は報告されなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
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