過敏性腸症候群治療のためのホメオパシー

過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)はよくみられる慢性障害で、腹痛、不快感、鼓張、便秘もしくは下痢またはその両方を特徴とする。人によって症状がさまざまであるため、治療が難しい。便秘型IBSという便秘が主な症状の人もいれば、下痢が主訴の人もいる。この場合は下痢型IBS(IBS-D、D:Diarrhoea)という。便秘と下痢両方の場合は、混合型IBS (IBS-M、M:Mixed)という。今のところ、IBSの最良の治療法に関して見解は一致していない。そのため、一部のIBS患者が利用しているホメオパシーの治療を含めた治療法の有効性と安全性を評価することが重要である。

ホメオパシーとは

ホメオパシーにはいくつか種類がある。クリニカル・ホメオパシーでは、ある一定の病態、例えばIBSなどに対して、同じ症状の人には同じレメディが処方される。個別化されたホメオパシーでは、症状や患者に影響を及ぼす可能性のある問題を詳細に問診・診察する。詳細な問診・診察の後、ホメオパシー医師が症状に応じて適切なレメディを選択する。個別化ホメオパシーは問診・診察とレメディの処方の両方を行い、クリニカル・ホメオパシーは詳細な問診・診察を行わずにレメディを処方する。

レビュー著者が調べたことは?

ホメオパシー治療がIBSの症状を改善するかどうかを調査した。

研究でわかったことは?

4件のランダム化比較試験(randomised controlled trials:RCT、IBSの参加者307例)を対象とした。2件のRCT(参加者129例)は、便秘型IBSの人の治療のため、ホメオパシーレメディ(アサフェティダとアサフェティダ+ナックスヴォミカ)とプラセボレメディとを比較した。1件の研究(参加者23例)は、IBSと診断された女性において個別化ホメオパシーと通常のケアとを比較した。1件の研究(参加者94例)は、個別化ホメオパシー+通常のケア、傾聴+通常のケア、通常のケアの3群を比較した。

以上4件の試験は、IBSの重症度に応じてホメオパシーの治療効果を検証した。個別化ホメオパシーと通常ケアを比較したRCTでは、参加者が少数で、試験の報告の質が低かったため、結論を導き出すことができなかった。この研究は1990年に行われたが、IBSにおける通常のケアがそれ以降変更した可能性があるため、現在の治療法の結果における比較が困難である。

個別化ホメオパシー+通常のケア、傾聴+通常のケア、通常のケアの3群を比較した研究は、ホメオパシー治療群の参加者(16例)が少数であったため、結論を導き出すことができなかった。

2件の小規模の研究(参加者129例)結果を統合したところ、アサフェティダレメディを用いるクリニカル・ホメオパシーは、便秘型IBS患者に対し、2週間という短期の追跡調査の時点で、プラセボに勝る有益の可能性が示唆されている。しかし、2件の研究とも1970年代に実施され、試験の報告は現在のように包括的ではなかった。これらの結果は非常に不明確で、クリニカル・ホメオパシーの有益の可能性を示唆することは不可能である。

結論

本レビューで評価されたアウトカムの結果は、明らかではない。従って、IBSの治療に対するホメオパシーの有効性と安全性に関する確固たる結論は得られなかった。IBSの治療に対する臨床および個別化ホメオパシーの有効性と安全性の評価には、多数の患者を登録する質の高いRCTがさらに必要である。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009710.pub3》

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