喘息患者における治療選択肢としてのヨガ

背景

喘息は発生の多い慢性疾患で、世界中で約3億人が罹患している。ヨガの人気は世界的に高まっており、喘息に関連した問題を軽減する可能性がある。しかし、既存の研究結果には矛盾が認められるため、喘息に対するヨガの効果を確認する必要がある。

試験の特性

1048名の参加者を対象に、ヨガの効果を通常ケアまたは「偽」ヨガと比較した15件の試験のレビューを行った。

結果

ヨガは生活の質(QOL)および喘息の症状をある程度改善する可能性が高いことが明らかになった。しかし、大部分の試験はさまざまな不備が認められるため、結果の信頼性は低い。肺機能に対するヨガの効果には矛盾が認められ、ヨガが薬物の使用を減らすことを示唆するわずかなエビデンスが得られた。望ましくない副作用に関する情報は非常に少なく、これを評価するにはより多くの試験を行う必要がある。喘息に対するヨガの効果に関して確実な結論を導くには、参加者数が多く質の高い試験が必要である。

著者の結論: 

ヨガが喘息患者のQOLおよび症状に軽度の改善をもたらす可能性が高いという中等度の質のエビデンスが得られた。ヨガの有害作用、肺機能への影響および薬物の使用に関してほかにも不明な点がある。喘息に対するヨガの効果を確認するには、サンプルサイズが大きく、方法論および報告の質が高いRCTが必要である。

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背景: 

喘息は発生の多い慢性炎症性疾患で、世界中で約3億人が罹患している。ホリスティック療法として、ヨガは喘息患者の身体的および精神的な苦痛の療法を軽減させる可能性があり、世界中で人気が高まっている。ヨガの効果を評価するため、いくつかの臨床試験が実施されたが、一貫性のある結果を得られなかった。

目的: 

喘息患者に対するヨガの効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、AMEDおよびPsycINFOなどの参考文献データベースの系統的検索によって得られたCochrane Airways Group Register of Trialsを系統的に検索し、また、呼吸器病学専門誌および学会アブストラクトのハンドサーチを行った。PEDroも検索した。ClinicalTrials.govおよびWHO ICTRP検索ポータルを検索した。初版から2015年7月22日まで、すべてのデータベースを検索した。出版言語による制限は設けなかった。さらに試験を検索するため、対象試験の参考文献一覧および関連するレビュー記事を確認した。その他の既報文献または未発表研究を調べるため、対象試験の試験責任医師およびこの分野の専門家に連絡を試みた。

選択基準: 

喘息患者を対象にヨガを通常ケア(または介入なし)または偽介入と比較し、生活の質(QOL)、喘息症状スコア、喘息コントロール、肺機能測定値、喘息薬の使用および有害事象のいずれかのアウトカムを1つ以上報告したランダム化比較試験(RCT)を組み入れた。

データ収集と分析: 

対象試験から、参考文献情報、参加者の特性、介入および対照の特性、方法論の特性、および注目すべきアウトカムの結果を抽出した。試験間で同一の尺度を用いてアウトカムを評価している場合、連続アウトカムについては平均差(MD)および95%信頼区間(CI)を用いて治療効果を示した。一方で、試験間で異なる尺度を用いてアウトカムを測定している場合、標準化平均差(SMD)および95%CIを用いた。二値アウトカムについてはリスク比(RR)および95%CIを用いて治療効果を測定した。Review Manager 5.3を用いてメタアナリシスを実施した。データ統合には固定効果モデルを使用した。ただし、試験間で顕著な異質性が認められる場合は、代わりにランダム効果モデルを使用した。定量的な統合が不適切または不可能なアウトカムについては記述統計による解析を行い、結果を記述方式で要約した。

主な結果: 

計1048名の参加者を対象とした15件のRCTを組み入れた。大部分の試験はインドで実施され、その他欧州や米国でも実施された。参加者の大多数は軽度から中等度の喘息に6カ月から23カ月以上罹患している成人男性および成人女性であった。5件の試験ではヨガ呼吸法のみを対象としており、他の試験では呼吸、姿勢および瞑想を含むヨガを評価していた。介入期間は2週間から54カ月間で、大部分の試験では6カ月程度であった。1件の試験ではすべての領域についてバイアスのリスクが低かった。他の試験では1つ以上の領域でバイアスのリスクが不明または高かった。

喘息患者において、ヨガがQOL(7ポイントスケールの喘息QOL質問票(AQLQ)の項目ごとのスコアのMD 0.57単位, 95% CI 0.37〜0.77; 5試験; 参加者375名)および症状(SMD 0.37, 95% CI 0.09 〜0.65; 3試験; 参加者243名)を改善し、薬物の使用を減らす(RR 5.35, 95% CI 1.29〜22.11; 2試験)可能性があるというエビデンスが得られた。AQLQスコアのMDは臨床的に意義のある最小差(MCID)の0.5を上回っていたが、対象試験で用いられた重症度スコアにはMCIDが設定されていなかったため、喘息の症状の変化の平均値がMCIDを上回っていたかどうかは不明である。ベースラインからの1秒努力性肺活量の変化に対するヨガの効果に統計学的有意差は認められなかった(MD 0.04 L, 95% CI -0.10〜0.19; 7試験; 参加者340名; I2 = 68%)。2件の試験では喘息コントロールの改善が示唆されたが、異質性がきわめて顕著(I2 = 98%)であったため、データは統合しなかった。ヨガに関連した重篤な有害事象は報告されていないが、このアウトカムに関するデータは限られている。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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