レビューの論点
妊娠期間中に適切な離乳期の栄養教育をおこなうことが、正期産で生まれた子どもの成長と発達に及ぼす影響に関するエビデンスを検討した。
背景
世界中で1億5千万人以上の子どもたちが栄養不足で、4千2百万人以上の子どもたちが太りすぎで肥満になっている。離乳期の栄養方法に関する適切な教育を家族に提供することは、栄養不足のリスクがある子どもたちや、太りすぎや肥満になりやすい子どもたちを保護しながら、栄養を最適化するのに役立つかもしれない。
研究の特性
2019年12月までに発表された研究を調べたところ、1万4,241人の赤ちゃんを対象とした臨床試験が21件見つかった。すべての研究で提供された栄養教育は、分析を統合して行うことができ、小児期の栄養不良のリスクを低減することを目的としていた。高所得国で 5 件の研究が実施されたが、報告された結果を本レビューに含めることができず、統合できなかった。
主な結果
低~中所得者層の家族に離乳期に適切な栄養方法についての教育を行うことで、生後12ヶ月の体重と身長が改善する可能性があることを明らかにした。栄養教育が子どもの1歳時の発育に及ぼす影響や1歳時の貧血のリスクについては、それぞれの結果が報告されているのは2つの研究のみであり、非常に不確かな点が多い。したがって、これらの結果については、本文にのみ記載している。子どもの過体重や肥満のリスクに対する栄養教育の効果を評価した研究や、このレビューで統合できるアウトカムを報告した研究は見つからなかった。
エビデンスの質
研究デザインの制限および我々のレビューに含まれている研究間の違いにより、栄養教育による小児期の栄養不良のリスクの減少に関するエビデンスの確実性は「低い」から、「中等度」に及んだ。留意すべき成長の改善量は少なく、臨床的意義は不明である。この改善がその後の人生でも継続し、より大きな改善につながるかどうかを確認するためには、より長期的な研究が必要である。含まれる研究の数が限られているため、本研究に含まれるその他の成果についてはエビデンスの確実性が低いと評価した。
食育が子どもの栄養過多や肥満のリスクを減らすことができるかどうか、さらなる研究が必要である。
《実施組織》 小林絵里子、阪野正大 翻訳[2020.10.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012241.pub2》