レビューの論点:肺疾患を持つ早産児に一酸化窒素ガスを吸入して投与すると、長期的な脳や肺の損傷を伴わずに生存率が向上するか?
背景:早産の新生児の呼吸不全は、肺に血液を運ぶ血管内の圧力が上昇することで複雑になることがある(肺高血圧症)。このような状態の児を治療するために機械的に補助人工呼吸が行われ、鎮静剤が投与されることがある。吸入された一酸化窒素ガス(iNO)は、肺の動脈の筋緊張を調整し、肺高血圧を減少させるのに役立つため、補助換気の必要性を減らすことができ、肺の損傷をより少なくすることにつながる。しかし、iNOは血小板機能に作用し、出血(血腫)、特に脳への出血を増加させる可能性があると考えられている。
研究の特性:レビュー執筆者は、2016年1月までにアップデートされた検索により、早産児におけるiNOの17のランダム化比較試験を発見した。これらの試験では、ベースラインの特徴が大きく異なる早産児を対象としているため、3つのグループに分けることにした。(1)重度の肺疾患を有する生後数日で治療を受けた児を対象とした試験、(2)慢性肺疾患のリスクが高まっていた児に生後数日以降の治療を提供した試験、(3)呼吸困難を経験した児に日常的な早期治療を提供した試験。
主な結果:試験の3つのグループのいずれにおいても、iNOが生存率を改善し、iNOが肺損傷を減少させることを示唆する一貫したエビデンスはなかった。第1群(早期レスキュー治療)の研究では、脳内への重篤な出血が20%増加したことが報告されている。この知見は、統計的に有意に近いものであった。全体として、エビデンスの質は中等度から高度であった。
この研究のレビューでは、吸入一酸化窒素療法は肺疾患を持つ早産児の転帰改善の可能性を改善するようではないことが明らかになった。重症の赤ちゃんに投与しても、iNOは効果がなかったようで、頭蓋内出血のリスクを高める一因になっていた可能性がある。
《実施組織》 小林絵里子、阪野正大 翻訳[2020.10.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000509.pub5》