合計参加者は5,805例で、より多くの研究を選択したが、患者が機械的腸管前処置または直腸浣腸の使用により利益を得られるという統計学的に有意なエビデンスはない。結腸手術では、腸洗浄を安全に省くことが可能で、腸洗浄により合併症発生率は低下しない。直腸手術に焦点を当てた数少ない研究では、有意な効果は認められていなかったが、機械的腸管前処置を選択的に用いることができる可能性が示唆されていた。腹膜縁以下で吻合再建を行なう待機的直腸手術適応患者に関するさらなる研究、および腹腔鏡下手術の適応患者に関するさらなる研究が、依然として必要である。
直腸結腸手術中の腸管内容物の存在は、吻合部漏出に関与するとされてきたが、機械的腸管前処置(MBP)が漏出および感染性合併症に有効であるという考えは、観察データと専門家の意見のみに基づくものである。直腸を洗浄し、器械吻合の操作を容易にする目的で、多くの外科医が直腸手術前に浣腸を使用している。この方法については、別に解析した。
直腸結腸手術における罹病率および死亡率に対するMBPの安全性と有効性を明らかにすること。
待期的直腸結腸手術前のMBPに関する試験を記述している発表文献を、MEDLINE、EMBASE、LILACS、IBECSおよびコクラン・ライブラリを通じて検索し、関連性のある医学雑誌および学会議事録をハンドサーチし、また、同僚との私信を通じて探索した。検索は2010年12月1日に実施した。
待期的直腸結腸手術の適応となった参加者を対象としたランダム化比較試験。種類を問わずMBPとMBP未実施を比較した介入を適格とした。主要アウトカムは、吻合部漏出‐直腸と結腸のそれぞれ-および統合した数値とした。副次アウトカムは、死亡率、腹膜炎、再手術、創傷感染、腹部外合併症、および全手術部位の感染とした。
データは別々に抽出し、チェックした。各試験の方法論的な質を評価した。ランダム化、盲検化、解析の種類、およびフォローアップ不能例数に関する詳細情報を記録した。解析では、Petoオッズ比(OR)をデフォルトとして使用した(統計学的な異質性は認められなかった)。
今回の更新では、6件の試験および新規の比較(機械的腸管前処置と浣腸との比較)が追加された。合計18件の試験を解析した。参加者5,805例のうち、2,906例がMBP(A群)に、および2,899例が前処置なし(B群)に待期的直腸結腸手術前に割付けられていた。機械的腸管前処置と前処置なしの比較結果は以下のとおりであった。1.低位前方切除術での吻合部漏出:A群8.8%(431例中38例)に対してB群10.3%(415例中43例)、Peto OR 0.88(0.55、1.40)。2.結腸手術での吻合部漏出:A群3.0%(1,559例中47例)に対しB群3.5%(1,588例中56例)、Peto OR 0.85(0.58、1.26)。3.全吻合部漏出:A群4.4%(2,275例中101例)に対しB群4.5%(2,258例中103例)、Peto OR 0.99(0.74、1.31)。4.創傷感染:A群9.6%(2,305例中223例)に対しB群8.5%(2,290例中196例)、Peto OR 1.16(0.95、1.42)。感度分析では、全結果に差は認められなかった。機械的腸管前処置(A)と直腸浣腸(B)の比較結果は以下のとおりであった。1.直腸手術後の吻合部漏出:A群7.4%(107例中8例)に対しB群7.9%(88例中7例)、Peto OR 0.93(0.34、2.52)。2.結腸手術後の吻合部漏出:A群4.0%(269例中11例)に対しB群2.0%(299例中6例)、Peto OR 2.15(0.79、5.84)。3.吻合部漏出全体:A群4.4%(601例中27例)に対しB群3.4%(609例中21例)、Peto OR 1.32(0.74、2.36)。4. 創傷感染:A群9.9%(601例中60例)に対しB群8.0%(609例中49例)、Peto OR 1.26(0.85、1.88)。