筋肉の電気的刺激により、脳卒中後の肩こりが改善されたが、肩痛の減少に関して証明する十分なエビデンスは得られていない。脳卒中(脳へ向かう動脈の閉塞、または脳内や脳上での動脈の破裂や出血のため起こる脳内の突発的な命にかかわる障害)が生じた患者では、しばしば肩痛が発症する。この肩痛は脳卒中によって引き起こされる問題を増大させる。肩の痛みは、筋力低下と筋肉の緊張の低下、感覚の喪失を引き起こすことがある。電気的神経筋刺激(ES)は、皮膚に電流を流すことで生じる。これは神経と筋繊維を刺激し、筋肉の緊張と筋力を改善し、痛みを軽減させることもある。レビューでは、ES後に肩こりが改善されたことが確認された。有害作用は認められなかった。このレビューではESが肩痛を軽減するかどうかを判断する十分なエビデンスが得られないことが確認された。更に研究が必要である。
現在のところ、ランダム化比較試験から得られたエビデンスにより、脳卒中後の肩周囲ESが疼痛の報告に影響を与える点が確証または論駁されることはないが、受動的上腕骨外旋に対するベネフィットは実際に得られている。関節窩上腕骨亜脱臼の低減を介する機序が考えられる。更なる試験が必要である。
脳卒中後の肩痛は頻度が高いとともに障害に至る。最適な管理法は不明であるが、疼痛の治療と予防には電気刺激(ES)が多く用いられている。
脳卒中後のいずれかの時点で生じた肩周囲の疼痛に対する予防および/または治療において、何らかの形態で用いられる表面ESの有効性について判定すること。
Cochrane Stroke Review Group trials registerを検索し、MEDLINE、EMBASE、CINAHLを更に検索した。装置メーカーおよびESのトピックについて発表した施設と連絡をとった。
肩痛の予防や治療を目的として、何らかの表面ES法(機能的電気刺激(FES)、経皮的電気神経刺激(TENS)、またはその他)が脳卒中後のいずれかの時点で適用され、これについて評価されたすべてのランダム化試験を対象とした。
2名のレビューアが独立して組み入れる試験を選択し、試験の質を評価し、データを抽出した。
4件の試験(被験者170名)が登録基準を満たしていた。試験デザインとES法はきわめて多様であったため、試験の統合が不可能となることが多かった。対象者数は少数であった。ES治療後では、対照と比較して疼痛発現に有意な変化が認められず(オッズ比(OR)0.64;95%CI 0.19~2.14)、疼痛強度にも変化が見られなかった(標準化平均差(SMD)0.13;95%CI -1.0~1.25)。受動的上腕骨外旋の無痛範囲改善には、ESが望ましい方向で有意な治療効果が認められた(加重平均差(WMD)9.17、95%CI 1.43~16.91)。上記の試験では、ESによって関節窩上腕骨亜脱臼の重度が低減しているものの(SMD -1.13;95%CI -1.66~-0.60)、上肢運動機能回復(SMD 0.24;95%CI -0.14~0.62)あるいは下肢痙性(WMD 0.05;95%CI -0.28~0.37)に対する有意な効果は認められなかった。電気刺激が肩に対して望ましくない作用を示すことはないようであった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.26]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。