予後不良の早期乳がんに対する高用量化学療法および女性患者自身の細胞を用いた(自家)骨髄移植または幹細胞移植

背景

最初の診断で複数のリンパ節転移が認められた乳がんの女性は、再発のリスクが高い。従来の化学療法は成功率が低く、高用量の化学療法は骨髄に損傷を与えるため安全ではない。そこで最高用量の化学療法を行った後、患者に幹細胞を移植して骨髄を再生させる治療法が有望視されている。本コクランレビューでは、2015年10月時点でのエビデンスを検証した。

研究の特性

再発リスクの高い早期乳がんの女性を対象に、高用量化学療法と従来の化学療法を比較した14件のランダム化比較試験(5,600人の女性)をレビューの対象とした。再発リスクの高い早期乳がん患者とは、複数の局所リンパ節に転移が認められるものの、局所リンパ節以外への転移は認められない乳がんの女性と定義した。

全研究が、その資金提供者を報告していた。8件の研究が非営利団体、1件が公的医療保険会社、1件が企業からの資金提供、4件が非営利団体と企業共同の資金提供を受けていた。4件の研究では、著者に潜在的な利益相反はないと報告され、6件の研究では、著者の1人以上が製薬会社から何らかの支援を受けていると報告され、4件の研究では、著者に潜在的な利益相反があるかどうかは言及されていなかった。

主な結果

高用量化学療法の使用は、生存期間の延長にほとんどまたは全く効果がない。無イベント生存率は、3年間の追跡調査では高用量群のほうが高かったが、この効果はさらに長期の追跡調査では明らかではなかった。治療に関連した死亡は、高用量群ではるかに多くみられた。副作用も高用量群のほうが多く、重症度も高かった。二次がんを発症する女性の数に対する効果は認められなかった。

エビデンスの質

エビデンスの質は高かった。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)串間 貴絵 翻訳、原 文堅(がん研有明病院乳腺センター乳腺内科)監訳 [2021.03.30] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD003139.pub3》

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