多発性骨髄腫におけるビスフォスフォネート製剤

レビューの論点多発性骨髄腫に対する既存の治療に加えた場合、ビスフォスフォネート製剤はどんな影響をもたらすか

背景多発性骨髄腫(骨髄腫や形質細胞骨髄腫としても知られている)は、B細胞が悪性化したもの、より正確に言うと形質細胞の悪性腫瘍である。この腫瘍は、骨内や骨外の組織で増殖する。骨に対する障害、すなわち溶骨性の変化があると、長骨の骨折や脊椎の圧迫骨折を引き起こしうる。骨破壊の機序は、破骨細胞と呼ばれる細胞による骨吸収が増大することに関係しているようだ。ビスフォスフォネート製剤は、破骨細胞の数と活性を減らすことで骨吸収を抑制する薬剤である。

検索期間 本研究のエビデンスは、2017年7月現在のものである。

研究の特性本研究は、7293人を組み込んだ24の試験を対象としたレビューのアップデート版である。20の研究は、ビスフォスフォネート製剤とプラセボあるいは無治療を検討したランダム化比較試験であった。残る4つは、比較の対象として他のビスフォスフォネート製剤を用いたランダム化比較試験であった。

主要な結果多発性骨髄腫の患者にビスフォスフォネート製剤を用いても、全生存期間や無増悪生存期間は改善しなかった。多発性骨髄腫の患者にビスフォスフォネート製剤を用いると、すべての骨折、椎骨骨折を減らすことができたが、椎骨以外の骨折は減らなかった。ビスフォスフォネート製剤は、副作用も少なく、痛みを緩和する効果もある。ただし、副作用として、顎骨への血流を減少させ、顎骨壊死をきたす可能性が有意に増加する。全体として、1000人の患者をビスフォスフォネート製剤で治療すると、およそ1人の患者が顎骨壊死を発症する頻度である。全生存期間、全骨折や特に椎体骨折を改善させるかについて検討したところ、ゾレドロネートはエチドロネートやプラセボよりも効果があったが、パミドロネートやクロドロネートより優れてはいなかった。アミノ系ビスフォスフォネート製剤(ゾレドロネート、パミドロネート、イバンドロネート)、非アミノ系ビスフォスフォネート製剤(エチドロネート、クロドロネート)のすべての製剤の中で、何らかのアウトカムに対してある特定の製剤が他より優れているというエビデンスは認められなかった。

エビデンスの質全般的なエビデンスの質は、中等度から非常に低度であった。すなわち、この問題について更なる研究、特に無治療やプラセボではなく直接他のビスフォスフォネート製剤と比較したランダム化比較試験が必要であることを示している。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 翻訳、康秀男 監訳[2019.10.19] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD003188》

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