GERD治療に対して腹腔鏡下胃底ひだ形成術は内科的管理よりも少なくとも短~中期で有効であるというエビデンスがある。手術はいくらかのリスクを伴い、手術の利益が長期持続するかどうかはなお確かでない。GERDに対する治療決断は患者や術者の選択に基づくべきである。
胃食道逆流症(GERD)はありふれた疾患であり、欧米化された国の人口の20%に上る人が胸焼け、逆流、または、この両方を間欠的に経験する。GERDをコントロールするのに、内科的管理あるいは外科的管理(腹腔鏡下胃底ひだ形成術)は最も臨床的に有効で費用対効果に優れた治療であるかどうかは不明である。
GERDがある成人を対象として、内科的管理と腹腔鏡下胃底ひだ形成術が健康関連QOLやGERD特異的QOLに及ぼす効果を比較する。
GENTRAL(2009年第2号)、MEDLINE(1966年から2009年5月まで)およびEMBASE(1980年から2009年5月まで)を検索した。更なる試験を同定するため、会議抄録と発表済み試験からの参考文献リストをハンドサーチした。関連性のある未発表材料を求めて、当該分野の専門家に連絡を取った。
内科的管理と腹腔鏡下胃底ひだ形成術を比較しているすべてのランダム化比較試験(RCT)と準ランダム化比較試験(QRCT)。
2人のレビューアが独自に、選択のため同定した論文からデータを抽出し、適格試験の方法論的質を評価した。主要アウトカムは、健康関連QOLとGERD特異的QOL、胸焼け、逆流、嚥下障害であった。
4件の試験の合計1,232例のランダム化された参加者を選択した。健康関連QOLは4件の研究により報告されたが、2件の研究(Anvari 2006;REFLUX Trial 2008)に対して固定効果モデルを用いてデータを統合した。外科的治療は、術後3カ月時点と1年時点において、内科的治療と比較して、健康関連QOLが統計学的有意に改善した(平均差(MD)SF36全体的健康感スコア-5.23、95%CI -6.83~-3.62;I2=0%)。4件の研究すべてが、外科的治療は、内科的治療と比較して、術後にGERD特異的QOLが有意に改善したことを報告したが、データは統合されなかった。胸焼け、逆流、鼓腸といった症状が、内科的治療と比較して、手術後に改善するが、ごく一部の参加者は術後も持続性の嚥下障害を示した。術後合併症の総発生率は低かったが、手術にはリスクを伴い、稀に術後有害事象が起こった。手術の費用は内科的管理の費用よりもかなり高い。しかし、データは治療の最初1年に基づいており、それゆえ、慢性GERDの長期治療に伴う費用や副作用を考慮する必要がある。