鍼治療はテニス肘を短期的に緩和する可能性があるが、さらなる研究が必要である。
肘外側の疼痛の治療における鍼治療(鍼またはレーザー)の使用を支持または反論するエビデンスは、不十分である。本レビューでは疼痛における鍼治療の短期有益性が示されたが、本結論は2件の小規模試験の結果に基づいており、その結果はメタアナリシスに統合できなかったものである。治療後24時間超の持続した有益性は証明されなかった。潜在的有害作用について評価し、記述した試験はなかった。テニス肘に対する鍼治療の効果の結論を導き出すには、サンプル・サイズが十分で、適切な方法を用いたさらなる試験が必要である。
本レビューは肘外側の疼痛への介入に関する一連のレビューの1つである。肘外側の疼痛、いわゆるテニス肘は、肘や前腕に疼痛があり、肘および手首の力や機能が低下する一般的な疾患である。中国では昔から肘外側の疼痛の治療に鍼治療が使われているが、西洋諸国でも筋骨格障害の一次治療に鍼治療を試みる医師や患者が増えている。鍼治療が肘外側の疼痛の治療に有効であるかどうかを確定する、入手可能なエビデンスのシステマティック・レビューは、今まで実施されていない。
肘外側の疼痛のある成人に対する鍼治療の有効性を、疼痛軽減、機能改善、握力および有害作用の点で確定すること。
MEDLINE、 CINAHL、 EMBASE and SCISEARCH、1966年から2001年のCochrane Clinical Trials Register and the Musculoskeletal Review Group’s specialist trial databaseを検索した。できる限り多くの試験を検索するために、同定したキーワードおよび著者を検索した。
2名のレビューアが独立して、事前に設定した選択基準に対して、すべての同定した試験を評価した。本レビューは、肘外側の疼痛のある(テニス肘)成人における鍼治療をプラセボまたは他の介入と比較した、言語制限のないランダム化比較試験(RCT)および準RCTを選択したものである。注目したアウトカムは疼痛、機能、身体障害、QOL、強度、患者の治療満足度および有害作用であった。
連続変数については、重み付け平均差(WMD)の解析を可能とするために平均値および標準偏差を抽出または帰属し、二値データに対してはイベント数および総参加数を相対リスク(RR)として分析、解釈した。臨床的および統計的異質性がない場合に限り、試験結果を統合した。
小規模RCTを4件選択したが、研究デザイン(特に小規模な参加数、不明瞭な割り付けの隠蔵化および相当数のフォローアップ不能)の欠陥や試験間の臨床的差異により、試験データをメタアナリシスで統合することは不可能であった。1件のRCTで、鍼治療は疼痛が緩和されている期間がプラセボより有意に長く(WMD = 18.8 時間、 95%CI 10.1〜27.5)し、1回の治療後に50%以上の疼痛緩和が認められる傾向が高かった(RR 0.33、 95%CI 0.16〜0.69)(Molsberger 1994)。2件目のRCTでは、全参加者においてプラセボより鍼治療で短期改善があるという報告がある傾向が高かった(RR = 0.09 95%CI 0.01〜0.64)(Haker 1990a)。長期では有意差は認められなかった(治療開始3〜12カ月後)。総体的有益性の点でレーザー鍼治療とプラセボの間で差がないことが、レーザー鍼治療とプラセボを比較したRCTで示された(Haker 1990b)。4件目では中国語で発表された試験を選択しており、ビタミンB12 単独注入とビタミンB12+鍼治療間に差がないことが示された(Wang 1997)。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.29]
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