患者の受容性、追加注射の必要性、および重度合併症の発現の測定に基づく、術中の麻酔効果および運動不能については、眼球周囲ブロックと球後ブロックでほとんど差はない。両麻酔について、重度の局所性または全身性合併症はまれであった。
白内障は世界的に失明の主な原因である。医学的に禁忌である場合を除き、白内障手術は通常、局所麻酔下で施行される。局所麻酔では、身体の特定部位を支配する神経をブロックし、局所麻酔薬を神経周囲部分に浸潤させる。眼麻酔の2つの主なアプローチは、球後と眼球周囲である。白内障手術において、眼球周囲アプローチが球後ブロックより有効かつ安全な麻酔であるかについては議論がある。
本レビューの目的は、眼球周囲(PB)麻酔による疼痛スコア、眼球運動不能、患者の受容性、並びに眼および全身性合併症に対する効果を球後(RB)麻酔との比較により評価することであった。
前回のレビューでは2007年12月までのデータベースを検索した。本改訂では、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2010年、Issue 10)、MEDLINE(1960年~2010年9月)、およびEMBASE(1980年~2010年9月)を検索した。
白内障手術のための眼球周囲麻酔と球後麻酔を比較しているランダム化比較臨床試験を対象とした。
2名のレビューアが別々に試験の質を評価し、データを抽出した。その後追加された情報、研究の方法論、欠損データについては試験の著者に問い合わせた。アウトカムを報告するための手法が選択された研究により異なっていたため、結果に関するナラティブを記述した。眼球の運動不能についてサブグループ解析を行った。
1,438例の参加者に関する6件の試験を選択した。6件の試験のうち3件は割りつけ順の作成が適切に行われていたが、すべての試験で割りつけの隠蔵化が不明確であった。球後麻酔または眼球周囲麻酔による手術中の疼痛知覚の差を示すエビデンスはなかった。両麻酔とも概して有効であった。完全な運動不能または局所麻酔薬の追加注射の必要性についての差を示すエビデンスはなかった。結膜浮腫は眼球周囲ブロック後で多くみられ[相対リスク(RR)2.11、95%信頼区間(CI)1.46~3.05]、また、眼瞼血腫は球後麻酔後で多くみられた(RR 0.36、95% CI 0.15~0.88)。球後出血はまれで、球後ブロックを実施した患者1例に1回のみ発生した。