卵巣癌は、女性のがん全体の約3%を占める女性生殖器系の最も一般的な悪性腫瘍の一つであり、先進国では婦人科系がんによる死亡原因の第一位になっている。婦人科腫瘍専門医による適切な初期外科治療は、生存のために重要である。初期に見つかった低悪性度の腫瘍であれば、手術のみで完治する可能性がある。進行性卵巣癌に対する現在の第一選択となる治療は、腫瘍減量手術に続けて化学療法を行うというものである。多くの患者は、18~22ヵ月後に再発する。再発卵巣癌の治療は、依然として困難である。再発卵巣癌の治療目標は、症状の改善、生活の質(QOL)の向上、生存期間の延長である。治療間隔を延長するのに適した薬剤の条件には、累積毒性がないこと、交差耐性がないこと、QOLにとって有益な効果があること、治療スケジュールが組みやすいことなどが考えられる。再発卵巣癌の治療に使用できる薬剤のうち、トポテカンは最も広く研究され、その特性が明らかになっている薬剤の一つである。このレビューでは、卵巣癌の管理におけるトポテカンの有効性と安全性を評価することを目的としている。
市販前に実施された、5640人の参加者を含む6件の多施設共同研究がこのレビューの対象となった。4件の試験のデータは、統合するのに十分な類似性がなかったため、プーリング分析は行われなかったが、残る2件の試験では行われた。トポテカンは、パクリタキセル、トポテカン+サリドマイドと同程度の効果があり、トレオスルファンよりも優れていると思われるが、ペグ化リポソーマル・ドキソルビシンよりも全生存期間(OS)が短い。また、トポテカンは、パクリタキセル、トレオスルファンよりも癌の進行を遅らせる。しかし、トポテカンとサリドマイドの併用はトポテカン単独よりも無増悪生存期間(PFS、がんが進行せずに安定した状態である期間のこと)が優れており、トポテカン単独だとトポテカンとサリドマイドの併用よりも有意に短い。カルボプラチンとパクリタキセルによる初回化学療法が効果を示した進行卵巣癌患者に対して、トポテカンを用いて地固め療法を追加してもPFSは改善しない。
3件の研究から得られたエビデンスの質は高かったが、残りの研究は方法の報告が不十分なため、エビデンスの質は低度または中等度であった。より確かな代表性を得るためには、今後、市販後の医薬品を対象とした、より大規模でデザイン性の優れたランダム化比較試験を行う必要がある。
《実施組織》杉山伸子、阪野正大 翻訳[2021.10.15]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD005589.pub2》