ウンカロアボは、植物であるペラルゴニウム・シドイデス(P.シドイデス)由来のハーブ抽出物であり、錠剤および液剤がある。この抽出物は、抗菌薬の使用が不要な急性呼吸器感染症(ARI)治療に用いられる。世界的な抗菌薬の不適切な使用および薬剤耐性率の上昇の観点から、このような疾患に対する有効な代替治療が必要とされている。一方で、ウンカロアボの安全性が懸念されている。
10件のランダム化臨床試験をレビューし、そのうち8件に、解析に組み入れるための十分な質があった。3件の試験では成人の急性気管支炎を扱い、一貫性は認められなかったが、症状(すべての症状、咳および痰の分泌)の消失に対しては全体的に有益な結果が得られた。小児の急性気管支炎に対しても、3件の試験で一貫性は認められなかったが、全体的に有益な複合効果が得られた。利用可能なデータにより、錠剤は、アルコール抽出物と比較して有効性が低い可能性があることが示されている。しかし、このことを立証するには試験数が不十分である。成人の急性副鼻腔炎および風邪の治療に対し、それぞれ1件の試験が利用可能であった。両試験において、この薬剤は、長期間服用した場合、頭痛や鼻汁などのすべての症状の消失に有効であることが示された。P.シドイデスによる有害事象は多くみられたが、重度のものはなかった。
全体として、病型ごとの試験はほとんどなく、すべての試験が同じ試験責任医師(製造会社)によるものであり、また同じ地域(ウクライナおよびロシア)で実施されたため、すべての主要なアウトカムに対するエビデンスの質を、低いまたは非常に低いとした。したがって、要するに、ARI治療に対するP.シドイデスの有効性に対するエビデンスは限られている。本エビデンスは、2013年4月現在最新である。
P.シドイデスは、成人の急性副鼻腔炎や風邪の症状緩和に有効な可能性があるが、疑いもある。成人および小児の急性気管支炎、成人の副鼻腔炎の症状緩和に有効な可能性がある。全体的なエビデンスの質は、小児および成人の急性気管支炎における主要なアウトカムに対しては低いと考えられ、急性副鼻腔炎および風邪に対しては非常に低いと考えられた。その他のARIに対する治療に関する信頼性の高いデータは同定されなかった。
ペラルゴニウム・シドイデス(P.シドイデス)、別名ウンカロアボは、植物性の生薬で、急性呼吸器感染症(ARI)の治療に有効であると考えられている。
小児および成人のARI治療に対するP.シドイデスの有効性と安全性を評価すること。
2013年4月、MEDLINE、Journals@Ovid、コクラン・ライブラリ、Biosis Previews、Web of Science、CINAHL、CCMed、XToxline、Global Health、AMED、Derwent Drug File and Backfile、IPA、ISTPB + ISTP/ISSHP、EMBASE、Cambase、LILACS、PubMedの構成要素「Supplied by Publisher」、TRIPdatabase、出版社のデータベースであるDeutsches Ärzteblatt、Thieme、Springer、Elsevier社のScienceDirectを検索した。組み入れに対する関連論文のWeb of Scienceにおいて引用文献検索(順方向検索)を実施した。加えて、試験登録簿のClinicalTrials.gov、Deutsches Register klinischer Studien DRKS(German Clinical Trials Register)、International Clinical Trials Registry Platform(ICTRP)–WHO ICTRP、Current Controlled Trials、そしてEU Clinical Trials Registerを検索した。
プラセボまたはその他の治療と比較し、ARIに対するP.シドイデス製剤の有効性を検討した二重盲検、ランダム化比較試験(RCT)。すべての症状の完全消失を主要評価項目と定義し、さらに、事前に定義された主要な症状の消失について検討した。
2名以上のレビュー著者(AT、JG、WK)が、それぞれデータを抽出し、質をスコア化した。年齢層および病型ごとに個別分析を行った。サブ解析では、製剤の種類(液剤、錠剤)を考慮した。I2統計量を用いて異質性について検討した。異質性が認められない場合(I2 < 5%; P > 0.1)は固定効果モデルを、また異質性が認められる場合には変量効果モデルを用いて、統合したリスク比(RR)を算出した。異質性が大きい場合(I2 > 50%; P < 0.10)は、統合した効果は算出しなかった。
適格な試験10件のうち8件を解析に組み入れた。2件は質が不十分であった。成人の急性気管支炎における有効性に関する3件の試験(患者746名、質の低いエビデンス)において、液体製剤ではほとんどのアウトカムに対し有効性が示されたが、錠剤では示されなかった。別の3件の試験(小児819名、質の低いエビデンス)では、小児の急性気管支炎に対し同程度の結果が示された。両メタアナリシスともに、製剤の種類によって関連する異質性が引き起こされたため、統合の小計は行わなかった。
副鼻腔炎患者を対象とした1件の試験(成人103名、非常に質の低いエビデンス)では、有意な治療効果が示された(21日時点での完全消失;RR 0.43、 95% 信頼区間 (CI) 0.30~0.62)。風邪を対象とした1件の試験では、10日後に有効性が示されたが、5日後では示されなかった(非常に質の低いエビデンス)。すべての試験に対し、試験の質を中等度と格付けした(確証されていないアウトカム評価、少数のサンプル脱落問題、医師主導型臨床試験のみ)。ファンネルプロットに基づき、出版バイアスの疑いがあった。
その他の急性呼吸器感染症の治療に対する有効なデータはなかった。P.シドイデスによる有害事象は多くみられたが、重篤なものはなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
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