症候性BPHの男性を対象としたナフトピジルの有効性に関するプラセボ対照試験からのデータはない。限定的な情報から、尿路症状の尺度スコア(総IPSS/AUA)、QoL(生活の質)スコア、およびベースラインからの尿路症状におけるナフトピジル治療による短期的改善は低用量タムスロシンに匹敵することが示唆されている。ナフトピジルによる有害作用は少なく、通常、軽度であった。
良性前立腺肥大症(BPH)は高齢の男性ではよくみられる状態であり、下部尿路症状(LUTS)を引き起こす。目標とする治療は、症状の緩和と病勢悪化の予防である。前立腺に存在する様々なα1アドレナリン作用性受容体(AR)のうちα-1a受容体は、前立腺の平滑筋の収縮に中心的な役割を果たすことが知られている。最近の研究から、BPH患者では同時にα-1d受容体が優勢であることが示されている。
BPHに伴うLUTSの治療のための経口選択的α-1dアルファ遮断薬ナフトピジルの有効性および有害作用を評価する。
1950年1月から2009年1月までに発表された試験をシステマティックにレビューする。検索源はMEDLINE、ならびに検索して引き出した論文および総説論文の参考文献などであった。
適格とされた試験は以下であった:症候性BPHと診断された男性を対象とし、ナフトピジルをプラセボ、コントロールまたは併用療法と比較し、ランダム化された群間で臨床的に関連性のあるアウトカムを評価し、最低4週間追跡しており、英語で発表されたもの。
参加者の人口統計データおよび共存疾患、登録基準、アウトカム、有害事象、脱落の数と理由を、1名のレビューアが標準抽出様式に抽出した。治療群およびコントロール群について、AUA(American Urological Association Symptom Score)およびIPSS(International Prostate Symptom Score)のそれぞれのスコア、その他の有効性アウトカムをベースラインからの平均変化率および改善率として算出した。実施可能な場合は、有効性アウトカムおよび有害事象データを統合した。
8件の試験が適格であった(参加者N=744)。試験はすべて日本で実施されていた。研究期間は4週間から17週間であった。参加者の平均年齢は68歳、治療前の平均IPSSは17.8、平均最大尿流量率(Qmax)は9.5mL/s(ミリリットル/秒)であった。ナフトピジルをプラセボと比較していた試験はなかった。5件の試験(N=419)で、25~75mg/d(ミリグラム/日)用量のナフトピジルは、低用量タムスロシン(0.2mg/d)と平均で同程度のIPSSの改善が認められた(8.4点対8.9点)。植物療法製剤(エビプロスタット)と比較して、ナフトピジルは総IPSS(-5.9対0.4、P<0.0002)を有意に改善させた。1件の試験で、ナフトピジルに抗コリン作動薬(オキシブチニンまたはプロピベリン塩酸塩)を追加しても、ナフトピジル単剤治療と比較してIPSSやQmaxに有意な改善を認めなかった。高用量(75mg/d)と低用量(25mg/d)のナフトピジルとの間でIPSSに有意差を認めなかったが、高用量群は低用量群と比較してQmaxが有意に改善した(1.2mL/s対0.2mL/s)。有害事象の報告例は少しであり、軽度であり、0.2mg/dタムスロシンでみられたものと同様であった。