肘内障とは?
肘内障とは、幼児の肘関節の脱臼であり、腕を真っ直ぐにしている時や、幼児が大人から衝動的に離れようとした時に、しばしば大人や、幼児より背の高い人に幼児の腕が引っ張られて生じる。 転落やひねったりすることでも生じる。幼児はすぐに痛みを訴え、腕を使えなくなる。
どうやって治療するか?
治療は通常、腕を操作して、肘の骨を正しい位置に戻すことである。通常、徒手的に行われる。徒手的な治療には2つの代表的な方法がある、回外法と回内法である。回外法では、前腕を外側に(幼児の手のひらが上に向くように)ひねる、もしくは回旋させる。その後、肘を曲げる(屈曲させる)こともある。この方法はよく使用されるが、常にうまくいくわけではない。回内法では、前腕を内側に(幼児の手のひらが下に向くように)ひねる、もしくは回旋させるどちらの方法も通常は安全だが、あざができて痛むこともある。
検索の結果
2016年9月までの医療文献データベースを調べた。9件の小規模な研究をみつけた。参加者は総計906人であり、全て7歳未満だった。10人中6人が女児であった。8件の研究は救急診療部もしくは外来で行われてた。1件の研究は小児整形外科専門外来で行われていた。8件の試験では、回内法と回外法を比較していた。1件は、2種類の回外法を比較していた。
主な結果
肘内障の子供の初回の整復を試みる時、回内法(手のひらを下向きにする)のほうがうまくいく可能性が高い。我々は、6人の子供を回外法でなく回内法で治療したら、初回の試みでの整復失敗を1人なくせると見積もった。このエビデンスは、2つの方法のどちらがより痛いかについて結論を導くには不十分である。同じ方法で2回目の整復を試みる時、回内法の方がよりうまくいく可能性が高い。100人中4人以下といった少数のケースで、どの整復の試みもうまくいかなかった。副作用や何人の子供が肘内障を再発したかについて報告した研究はなかった。
2つの回外法を比較した研究では、初回の整復を試みたあとの失敗率はどちらの方法でも同じであったという、とても低い質のエビデンスがあった。
エビデンスの質
全9件の研究で、得た結果の信頼性に関わる方法論的な限界があり、バイアスのリスクが高かった。回内法と回外法を比較した、初回の整復の試みでの失敗率に関するエビデンスの質は低い。つまり、我々は結果に確証が持てない。どちらの比較についても、他のアウトカムに関するエビデンスの質はとても低いので、我々は結果にとても確証が持てない。
結論
低い質のエビデンスだが、幼児の肘内障の整復には、回内法が回外法よりうまくいきやすいことが示唆された。痛み、副作用を含む他のアウトカムからはなんの結論も導き出されなかった。
《実施組織》井上円加、藤原崇志 翻訳[2018.6.5] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007759》