子宮内膜症の痛みに対する鍼治療

子宮内膜症は、慢性骨盤痛の原因となる婦人科疾患であり、月経痛が最も顕著であり、最も一般的な症状である。鍼治療は、痛みやさまざまな婦人科疾患の治療に用いられる。本レビューは、子宮内膜症の痛みを軽減するための鍼治療の有効性を検討した。しかし、1件の研究のみ、我々の選択基準を満たした。対象の研究のデータは、67名の女性を含み、月経痛を軽減するための耳鍼は中薬(中医学の薬草療法)と比較して、より効果的であることが示唆された。研究は、参加者に治療の副作用があったかどうかを報告しなかった。これらの結果を確認するために、従来の治療法と鍼治療を比較する、より大規模で適切にデザインされた研究が必要である。

著者の結論: 

本レビューが対象とした唯一の研究結果に基づくと、子宮内膜症の痛みに対する鍼治療の有効性を裏付けるエビデンスは限定的である。本レビューは、従来の治療とさまざまなタイプの鍼治療とを比較して評価する、適切にデザインされた二重盲検ランダム化比較試験を今後の研究に発展させる必要性を強調する。

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背景: 

子宮内膜症は、高頻度でみられる婦人科疾患であり、女性の生活に著しく影響を与えている。臨床所見は、無症状から慢性骨盤痛と様々で、最も顕著なものは、月経困難症である。子宮内膜症の痛みの管理は現在、不十分である。鍼治療は、婦人科疾患の研究がなされてきたが、子宮内膜症の痛みに対する有効性は不明確である。

目的: 

子宮内膜症の痛みに対する鍼治療の有効性と安全性を確認する。

検索戦略: 

我々は、Cochrane Menstrual Disorders and Subfertility Group (MSDG) Specialised Register of controlled trials、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (コクラン・ライブラリ)、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、AMED、 PsycINFO、CNKI、TCMDS (開始から2010年まで)および、検索した論文の参考資料を検索した。

選択基準: 

腹腔鏡で子宮内膜症と確定診断された出産可能年齢の女性を登録し、鍼治療(身体、頭皮または耳)とプラセボまたは偽鍼治療、無治療、従来の治療、中薬(中医学の薬草療法)とを比較した単盲検または二重盲検比較試験。

データ収集と分析: 

3名の著者は、それぞれバイアスのリスクを評価し、データを抽出した。我々は追加情報に関しては研究著者に連絡を取った。1件の研究のみを対象としたため、メタアナリシスは行わなかった。主要アウトカムは、子宮内膜症の痛みの減少とした。副次的評価項目は、QOLスコアの改善、妊娠率、有害作用、子宮内膜症の再発とした。

主な結果: 

子宮内膜症に対する鍼治療を対象とした24件の研究を同定した。しかし参加者67名を登録した1件の研究のみが、すべての選択基準を満たした。対象とした1件の試験は、中薬新薬臨床研究指導原則(Guideline for Clinical Research on New Chinese Medicine)に基づき疼痛スコアおよび治癒率を定義した。中薬新薬臨床研究指導原則の骨盤子宮内膜症治療のスケール15ポイントを用いると、月経困難症スコアは、鍼治療群が低かった(平均差 -4.81ポイント、95%信頼区間-6.25〜-3.37、P < 0.00001)。耳鍼と中薬の総有効率(「治癒」、「有意に有効」または「有効」)は、それぞれ、91.9%および60%であった(リスク比3.04、95%信頼区間1.65 〜5.62、P = 0.0004)。改善率は、軽度から中等度の月経困難症においては、耳鍼および中薬の間で有意差を認めなかったが、耳鍼が重度の月経困難症の痛みを有意に軽減した。

副次的評価項目のデータは、得られなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.2.27]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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