レビューの論点
急性脳梗塞患者に対する抗菌薬の予防的投与は、フォローアップ時の要介護や死亡のリスクを低減し、感染率を低下させるか?
背景
脳卒中は、高所得国における身体障害の主な原因であり、世界的に死亡原因の第2位となっている。その後、合併症、特に感染症を発症することが多く、脳卒中を発症した人の約30%に発症すると言われている。感染症の発生は、脳卒中後の治療評価に悪影響を及ぼす可能性がある。抗菌薬による予防的な治療は、感染症の数を減らし、それによって脳卒中の治療評価を改善する可能性がある。
検索日
このレビューは2017年5月までのものである。
試験の特徴
このレビューでは、予防的な抗菌薬の投与に関する8件の研究、合計4,488人の脳卒中患者を対象とした。2,230人の参加者は予防的な抗菌薬の投与に、2,258人の参加者は対照群に無作為に割り付けられた。参加者の平均年齢は、予防的な抗菌薬投与群では74.2歳、対照群では74.8歳であった。両グループともに、男性の割合は52%であった。試験の介入方法は8件の研究すべてで異なっており、2件の研究では、肺炎を治療をすることを目的として、その地域の抗菌薬使用方針に従って試験担当者が抗菌薬(の種類)選択していた。
主な結果
予防的に抗菌薬を投与しても、要介護や死亡のリスクは減少しなかった。
しかし、予防的な抗菌薬の投与により、「全体的な」感染症の発生率は26%から19%へと有意に減少した。感染症の種類については、尿路感染症(4%対10%)では有意な結果が得られたが、肺炎(10%対11%)では影響がなかった。
抗菌薬の予防投与による重大な副作用は報告されなかった。
エビデンスの質
脳卒中における抗菌薬の予防的投与の正味の効果について、初めて「全体的」な結論を出すことができた。しかし、急性期脳卒中患者に抗菌薬の予防的投与を行うかどうかの判断は、慎重に行わなければならない。研究は異質で、参加者数が多かったのにもかかわらず、合計8件の研究から得られた結果は限られている。このうち2件の研究では、6つの基準のうち3つの基準でバイアスのリスクが高いと判断された。全体的に、本レビューの主な結果(「あらゆる」予防的な抗菌薬の投与、「あらゆる」用量、「あらゆる」治療期間)に関するエビデンスの質は、高度~中等度であった。
《実施組織》 堺琴美、冨成麻帆 翻訳 [2021.10.21] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review,Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD008530.pub3》