背景
手術を予定しているがん患者は血栓(血管内にできた血液の塊)のリスクが高い。血栓を予防するために投与される抗血栓薬(抗凝固薬)として、未分画ヘパリン(UFH)静注(静脈内に注入)、1日1回または2回投与の低分子ヘパリン(LMWH)皮下注(皮下組織に注射)、フォンダパリヌクスがある。これらの抗凝固薬の有効性と安全性プロファイルは異なる場合がある。
試験の特性
複数の科学データベースから、手術を予定しているがん患者に対する抗凝固薬が死亡、肺塞栓(肺の血栓)、深部静脈血栓(脚の静脈の血栓)、あざ、出血、輸血の必要性に及ぼす影響に注目した臨床試験を検索した。治療の種類を問わず固形腫瘍または血液がんを有する成人および小児(年齢、性別を問わない)患者の試験を選択した。本エビデンスは2018年6月14日現在のものである。
主要な結果
がん患者9,771例を対象とした試験20件を見出した。エビデンスからは、死亡、血栓の発生、出血に対する影響に関して低分子ヘパリンと未分画ヘパリンとで差は認められなかった。手術後、低分子ヘパリンでは未分画ヘパリンと比べ、傷周囲のあざが少なかった。フォンダパリヌクスは血栓の発生リスクを減少させた可能性がある。
エビデンス
の信頼性
エビデンスの信頼性は検討対象のアウトカム全体で低~中等度とさまざまであった。
《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)鈴木久美子 翻訳、喜安 純一(飯塚病院 血液内科)監訳 [2018.11.10] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009447》