レビューの論点
脳卒中後の患者における言語障害を改善するための経頭蓋直流電気刺激法(Transcranial direct current stimulation :tDCS)の効果を評価すること。
背景
脳卒中は世界的に身体障害の主要な原因の一つである。脳卒中の大多数は、血栓が脳の血管を詰まらせる場合に生じる。血液が脳に適切に供給されないと、脳はすぐに損傷をおこし、永続的な損傷を受ける場合がある。また、脳卒中生存者では、この損傷が言語障害(失語症)の原因となることが多い。脳卒中後の失語症患者は、意思疎通の状況において、言語の理解力または発話力またはその両方に困難を生じる。現在行われている言語聴覚療法(speech and language therapy:SLT)の言語障害に対する有効性は限られている。SLTの効果を促進させる方法の一つとして、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation :tDCS)として知られる技術による非侵襲的な脳刺激の追加が考えられる。この技術は脳の機能を操作するもので、言語障害の改善に用いられる。しかし、SLTアウトカムの改善に対するこの介入の有効性は依然として不明である。
検索期間
本レビューの検索は、2018年6月12日現在までのものである。
試験の特性
本レビューには、初発脳卒中が原因で失語症を発症した参加者421例を対象にtDCSをtDCSの偽治療と比較した21件の臨床試験を組み入れた。
主要な結果
tDCSが日常のコミュニケーションや思考力において言語能力の改善に役立つ可能性を示す科学的根拠(エビデンス)は認められなかった。しかし、限定的ではあるが、tDCSが名詞を挙げる能力改善に役立つ可能性を示すエビデンスが認められた。重篤な有害作用は認められず、有害作用や試験からの脱落の頻度は増加しなかった。この治療法が通常の診療でうまくいくかどうかを判断ためには、この分野でのさらなる試験が必要である。今後の研究の著者は、最新の研究の質の基準を遵守するべきである。
エビデンスの質
エビデンスの質は非常に中等度であった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2019.09.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009760.pub4》