レビューの論点
重症筋無力症(MG)、新生児筋無力症および先天性筋無力症候群(CMS)成人および小児に対するエフェドリンの効果に関するエビデンスのレビューを行った。
背景
筋無力症はまれな疾患で、主な症状は筋肉疲労および筋力低下である。これらの症状は、神経からの信号が筋肉に正しく伝達されないためにおこる。自己免疫性MGおよび新生児筋無力症では、これらの信号を伝達する蛋白を自身の免疫が攻撃する。CMSではこれらの蛋白に先天性な異常がある。筋無力症患者の大多数は標準薬および支持療法に対する反応性が良好である。エフェドリンは初回治療が成功しなかった場合に役立つ可能性がある。エフェドリンは刺激薬であるが、正確な作用機序は不明である。把握している限りでは、これまで筋無力症患者に対するエフェドリンの使用が適切に評価されたことはない。
主な結果およびエビデンスの質
ランダム化試験によるエビデンスの質が最も高い。新生児筋無力症、自己免疫性MGおよびCMSに対するエフェドリンに関するランダム化試験は同定されなかった。ランダム化試験よりもエビデンスの質が低い53件の非ランダム化試験では、筋力低下、疲労および生活の質に対するエフェドリンの効果が報告された。これらの結果を本レビューの「考察」に記述方式で説明した。筋無力症の種類によって、効果が異なる可能性がある。これらの試験で報告された有害作用には、動悸、睡眠障害、神経過敏、エフェドリン中止時の易刺激性などがあった。MG、新生児筋無力症およびCMSに対するエフェドリンの効果を評価するには、質の高い試験が必要であると結論付けた。
エビデンスは、2014年11月現在のものである。
RCTまたは準RCTからエビデンスは得られなかったが、非ランダム化試験の観察所見を入手した。妥当性を確認した適切なアウトカム測定法を採用した一連のn-of-one(n=1)のRCTなど、適切な種類の前向きRCTによるエビデンスがさらに必要である。
筋無力症は、神経筋接合部の構成成分に対する抗体(自己免疫性重症筋無力症[MG]、新生児重症筋無力症[NMG])または神経筋接合部蛋白の遺伝子欠損(先天性筋無力症候群[CMS])が神経筋伝達に影響を及ぼす疾患である。臨床的に、一部の患者ではエフェドリン投与が有効であると考えられるが、エフェドリンの効果および有害作用に関する系統的な評価は行われていない。
自己免疫性MG、一過性新生児MGおよび先天性筋無力症候群の患者におけるエフェドリンの効果および有害作用を評価すること。
2014年11月17日にCochrane Neuromuscular Disease Group Specialized Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINEおよびEMBASEを検索した。また、論文の参考文献一覧、関連学会の学会抄録集および前向き試験のレジストリも検索した。さらに、製造業者およびこの分野の研究者に問合せを行った。
自己免疫性MG、NMGまたはCMSの成人または小児において、エフェドリンを単剤投与または他の薬物へ上乗せした場合をプラセボまたは無治療と比較したランダム化比較試験(RCT)および準RCTを検討した。
2名のレビュー著者がそれぞれ試験のデザインおよび質を評価し、データを抽出した。追加情報を入手するため、研究の著者に連絡を取った。対象文献から有害作用に関する情報を収集し、試験著者に問合せを行った。
RCTおよび準RCTが同定されなかったため、MG、NMGおよびCMSに対するエフェドリンの効果を立証することができなかった。本レビューの「考察」において、53件の非ランダム化試験の観察結果について持久力、筋力および生活の質などを記述方式で説明した。筋無力症の種類によって、効果が異なる可能性がある。37件の試験ではCMS患者を、5件ではMG患者を対象としており、11件では対象とした筋無力症の詳細が不明であった。NMGに関する試験は同定されなかった。報告のあった有害作用は、頻脈、睡眠障害、神経過敏および離脱症状であった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
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