背景
耳垢の蓄積はよく見られる。患者にとっては不快で、聴覚問題を引き起こす可能性もある。 点耳薬は耳垢を柔軟にし、耳洗浄などの追加治療の必要を防ぐ潜在的な手段として研究されてきた。本レビューでは、どの治療(油性と水性の点耳薬もしくは点耳スプレー)が蓄積した垢の除去に効果的かを検討した。
試験の特性
2018年3月、患者の耳に蓄積した耳垢を柔軟にして除去するため点耳薬を使用した臨床試験を検索した。合計623例が参加した10件の試験を同定し、レビューに組み入れた。しかし、我々の主要アウトカム「耳垢を完全除去した患者の割合」の分析に使えるデータを提出していたのは、これらの試験のうち6件のみだった。この6件の試験には、耳垢で部分的または完全に外耳道が塞がった小児と成人両方(すべての年齢層)の参加者合計360例が含まれていた。
主要な結果
組み入れた10件の試験では、以下のいずれかの検証が行われていた。油性の点耳薬(ステアリン酸トリエタノールアミン、アーモンドオイル、ベンゾカイン、クロロカーボン)、水性の点耳薬(ドクサートナトリウム、過酸化カルバミド、フェナゾン、サリチル酸コリン、過酸化尿素、炭酸カリウム)、生理食塩水(塩水)、または水のみ、もしくは無治療。
1件の試験のみ、有効成分を含む点耳薬を使用したときと点耳薬を全く使用しなかったときの比較を行っていた。点耳薬は、耳垢が除去される割合を20分の1(何もしない場合)から5分の1(点耳薬を使用した場合)に増やすかもしれない。
水性または油性の点耳薬が、食塩水または水と異なるというエビデンスは見つからなかった。しかし、水または食塩水が何もしないよりはよいというエビデンスも見つからなかった。
有害(副)作用は多くはなかった。30例未満の患者のみが点耳薬を使用したときの有害事象を報告しており、軽度(わずかな刺激、痛み、または不快な臭いなど)のものだった。重篤な副作用は、どの参加者からも報告されていない。
エビデンスの質
試験から得たエビデンスの質を、非常に低い、 低い、中程度、 高いという4つのレベルを使って評価した。高い質のエビデンスは、結果に非常に信頼がおけることを意味し、非常に低い質のエビデンスは、結果についてあまり確信が持てないことを意味する。垢の除去に関して、エビデンスの質は低いと評価した。有害事象に関しても、エビデンスの質は低いと評価した。
結論
耳垢で部分的または完全に耳道が塞がったときに、点耳薬を使用すれば耳の中の耳垢除去に効果的かもしれないことがわかった。それぞれの点耳薬の優劣、また有効成分を含む点耳薬がただの水や塩水よりもよいのかどうかは明らかにされていない。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD012171.pub2】