レビューの論点
転倒を軽減させる介入を受けた多発性硬化症(MS)患者は介入を受けていない方と比較して転倒に関する転帰は良いものになるか?加えて、多発性硬化症患者に対し転倒に対する介入の種類によって結果が異なるか?
背景
多発性硬化症患者は中枢神経の損傷により、思考の困難さや筋力の低下、筋緊張の変化、感覚障害、運動の調整や移動の難しさから多発性硬化症ではない方と比較して転倒の危険性が増大する。転倒を防ぐための介入は多発性硬化症患者に対し提供されており、多くの場合は運動、投薬、手術、尿失禁の管理、輸液・栄養療法、心理学的介入、支援技術の利用、社会的環境調整、知識の提供等が実施されている。多発性硬化症患者は高齢者と比較し転倒の危険が3倍上昇するが、多発性硬化症において転倒を減少させる介入が有効であるか不明である。現在、多発性硬化症患者に対する転倒における介入の有効性を検証した研究は、いくつか質の高い研究がある。
研究の特徴
このレビューでは転倒に対して様々な種類の介入を行った、839人の参加者を対象とした13の研究が含まれており、多くの研究では運動介入と未介入、もしくは2つ以上の転倒予防の介入を比較していた。
主な結果とエビデンスの質
主要な結果の一部においては低い、もしくは非常に低いエビデンスの質であったため転倒予防における運動の効果においては不確実性がある。これらの結果はバイアスのリスクや方法における欠点があると判断された少数の小規模試験のみであったため、転倒予防における信頼性は低い。レビューの根拠となる質の高い研究は依然として少数であり、より多くの質の高い研究が必要とされる。
《実施組織》久保田純平(公立陶生病院)、冨成麻帆 翻訳[2020.11.04]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012475.pub2》