論点
透析を必要とする慢性腎臓病の患者は、多くの理由で栄養失調を発症するリスクがあり、食欲が乏しいために食事摂取量が不足していることがよくある。経口栄養補助食品は、一般に、必要栄養量を満たすのに十分な量を食べていない人に提供される。透析患者に栄養補助食品を提供するには、カリウム、リン酸、水分制限を注意深く考慮する必要がある。
実施したこと
タンパク質を含む栄養補助食品を経口投与すると、血清アルブミン濃度やその他の栄養指標が向上するかどうかを確認することを目的とした。
わかったこと
このレビューには22件(合計1278人)の研究が含まれ、タンパク質を含む経口栄養補助食品の効果を調査した。すべての参加者は、維持透析を受けている成人だった(79%が血液透析、21%が腹膜透析)。研究の観察期間は1~12ヶ月間であった。調査結果によると、タンパク質を含む栄養補助食品を経口投与すると、おそらくアルブミン濃度(栄養状態の指標)がわずかに増加し、プレアルブミン濃度(アルブミン濃度よりも短期間の栄養状態を反映する指標)と中腕筋周囲(骨格筋量の指標)を改善する可能性があることが示唆された。アルブミン濃度の上昇は、血液透析を受けている参加者と栄養失調の参加者でより顕著であった。経口によるタンパク質の栄養補給がカリウムとリン酸の血中濃度に影響を与えるかどうかは不明である。タンパク質を含む経口栄養補助食品は、腹部症状を発症するリスクにほとんど差がないか、あるいは全く差がなかった。研究の質とデザインにはいくつかの違いがあった。
結論
著者らは、タンパク質を含む経口栄養補助食品が、透析を必要とする患者において一部の栄養指標を改善するのに効果的であると結論付けている。ただし、これらの結果がこの集団にとって意味のある結果につながるかどうかは依然として不明である。この治療の費用対効果を見極め、気分が良くなったり、長生きしたりといったメリットを患者にもたらすことができるかどうか、さらなる研究が求められている。
《実施組織》榛葉有希 杉山伸子 翻訳[2020.6.1]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012616.pub2》