レビューの論点
このレビューの目的は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の男性の勃起不全(ED)を改善するための非侵襲的気道陽圧療法の効果と受容性を評価することである。
背景
OSASは、睡眠中に繰り返し喉が閉塞し、呼吸が何回も一時停止する状態をいう。EDとは、男性が満足のいく性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、もしくは維持できない状態をさす。OSASとEDには、偶然とは言えない関連がある。
非侵襲的気道陽圧療法は、酸素を供給するマスクに付ける装置である。この装置は、空気を気道に送り込み、呼吸を助ける。装置には、持続陽圧呼吸法(CPAP)、二層式陽圧呼吸法(BiPAP)、可変陽圧呼吸法(VPAP)など、いくつかの種類がある。CPAPは、OSASに対する第一選択の治療法として広く知られている。しかしながら、CPAPやその他の非侵襲的気道陽圧療法が、OSAS男性のEDに効果があるかどうかはわかっていない。
検索日
エビデンス検索の最終日は、2021年6月14日である。
研究の特徴
6件の研究を対象とし、315人のOSASとEDを持つ男性を対象とした。CPAPを使用する場合と次のいずれかの場合について、少なくとも1ヶ月間比較した。CPAPを使用しない場合、擬似装置(CPAPに似せた、陽圧をかけない偽の装置、プラセボ)を使用する場合、ホスホジエステラーゼ5型阻害剤(EDを治療するのに第一選択薬となる経口薬)を使用する場合。主要評価項目として、EDの寛解および重篤な有害事象、副次的な評価項目として、性に関連したQOL、健康に関連したQOLおよび軽度の有害事象について、それぞれ評価した。
主な結果
CPAP装置とCPAPなしとの比較
CPAPの4週間後および12週間後のED、12週間後の性に関連したQOLへの影響については不明である。いずれの群も、12週間後における重篤な副作用の報告はなかった。
CPAP装置と擬似装置との比較
1件の研究(対象者61人)では、CPAPと擬似装置を比較したが、研究デザインと報告方法の問題により、データを分析することができなかった。
CPAPとシルデナフィル(ホスホジエステラーゼ5型阻害薬)との比較
シルデナフィルは、CPAPよりも12週間後における勃起機能と性に関するQOLを改善する可能性がある。いずれの群も重篤な副作用を報告していなかったが、両群とも12週間後における一過性の軽い副作用を報告した。
エビデンスの質
研究の実施方法に限界があり、対象者数が少なく、結果が不正確であるため、結果は不確実なものである。
《実施組織》 杉山伸子、小林絵里子 翻訳 [2022.02.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CDCD013169.pub2》