頸動脈パッチ血管形成術に使用する様々な種類のパッチ

論点

頚動脈パッチ血管形成術を受ける患者さんに最適なパッチ素材の種類は何か?

背景
頸動脈内膜剥離術は、脳卒中を引き起こした動脈の内膜の一部を取り除くために行われる手術である。通常、この手術が必要な患者さんは、最近脳卒中の症状が出たか、頸動脈に重い病気があるため、脳卒中のリスクがある。頸動脈手術の最後にパッチを挿入することで、さらなる脳卒中や動脈疾患のリスクを減らすことができるようである。このパッチは、合成素材や患者さん自身の静脈、あるいは牛の心膜などの天然素材で作られている。静脈パッチが使われることが多く、感染しにくいのが特徴である。しかし、パッチが異常に腫れたり、パッチが破れたりすることが懸念されている。ダクロンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの合成繊維のパッチ素材は強度が高く、パッチが破れるリスクが低いと思われる。しかし、合成素材は感染のリスクが高くなる可能性がある。牛の心膜は、感染症やその他の合併症のリスクが低い可能性がある。しかし、頸動脈パッチ血管形成術に最適な材料はまだ不明である。本レビューは、臨床転帰(脳卒中や死亡など)や合併症(パッチの破裂や感染など)に関して、ある種のパッチが他のものより優れているかどうかを評価することを目的としている。

検索日
2020年5月25日までの研究を検索した。

研究の特徴
このレビューでは、2,278件の頸動脈内膜切除術を対象とした14件のランダム化比較試験(RCT)を特定し、異なるパッチ材料を比較した。7件の試験では静脈閉鎖とPTFE閉鎖を、5件の試験ではダクロングラフトと他の合成材料を、2件の試験では牛心膜と他の合成材料を比較した。主要エンドポイントは、術後および長期(少なくとも1年間)の手術側の脳卒中であった。副次エンドポイントは、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、死亡、動脈の狭窄・閉塞、その他、動脈破裂、脳神経麻痺、創感染・出血、再手術・異常腫脹(偽動脈瘤)などの合併症とした。

主な結果
頸動脈内膜切除術後に異なる種類のパッチ材を使用した結果は以下の通りであった。
- 静脈パッチと合成素材との比較:術後および長期にわたる脳卒中のリスクに差はなかった。静脈パッチは、異常な腫れ(仮性動脈瘤)がより多く発生するように見えることが主な懸念点であった。その他の合併症に関する情報は限られていた。

- ダクロンと他の合成素材との比較:ダクロンパッチは、長期追跡調査において、周術期の脳卒中とTIAの複合リスク、早期の動脈再狭窄または閉塞、あらゆる脳卒中と関連していたが、結果(j評価項目)イベントの数は少なかった.

- 牛心膜パッチと他の合成素材との比較:結果(j評価項目)イベントの数は少なかったが、いずれの臨床結果や合併症にも差はなかった。その他の合併症に関する情報は限られていた。

エビデンスの質
ほとんどのエビデンスは、研究方法や人数が少ないため、質が低いか非常に低いものであった。介入の性質上、外科医や患者に対して盲検化できたランダム化比較試験はなく、ほとんどの試験は資金源を報告していない。信頼区間が広く、イベント発生率が低いため、ほとんどの結果(評価項目)が不精確であるとしてダウングレードされた。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳 [2022.02.27]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000071.pub4》

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