現在のエビデンスは有望なものであるが、急性虚血性脳卒中の治療にフィブリノーゲン低下薬をルーチンに使用することを支持するほど十分に頑健なエビデンスではない。有意義な利益があるか、利益がある場合にはどのような患者カテゴリーが利益を受ける可能性が高いかを検討するため、さらなる試験が必要である。
フィブリノーゲン低下薬は、血漿中のフィブリノーゲンを減少させ、血液粘度を低下させて血流を増加させる。このため、血管を閉塞している血餅を除去し虚血性脳卒中後の脳罹患部位への血流を再確立するのに役立つ。出血リスクは血栓溶解薬より低い可能性がある。本レビューは1997年に最初に発表されたコクラン・レビューの更新であり、最近の更新は2003年であった。
急性虚血性脳卒中患者におけるフィブリノーゲン低下薬の効果を評価すること。
Cochrane Stroke Group Trials Register(2011年7月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2011年第7号)、Chinese Stroke Trials Register(2011年9月)、MEDLINE(1950~2011年7月)、EMBASE(1980~2011年7月)およびWeb of Science Conference Proceedings(1990~2011年7月)を検索した。さらに、6件の中国のデータベース、4件の進行中試験登録(2011年7月)および関連性のある参考文献リストも検索した。過去の本レビューでは、雑誌をハンドサーチし中国、日本の研究者と関連性のある製薬会社に連絡を取った。
虚血性脳卒中確定あるいは疑いの患者を対象に、脳卒中発症の14日以内に開始したフィブリノーゲン低下薬をコントロール群と比較しているランダム化試験
2名のレビューアが別々に試験を選択し、試験の質を評価しデータを抽出した。不一致は討議により解決した。
5,701例の患者を対象にした8件の試験を選択した。6件の試験はアンクロッドを検証し、2件の試験はデフィブラーゼを検証していた(患者は3時間以内~48時間以内に投与を受けていた)。7試験で割りつけの隠蔵化(コンシールメント)が適切であった。フィブリノーゲン低下薬により、追跡期間終了時に死亡あるいは障害を有する患者割合がわずかに低下した[リスク比(RR)0.95、95%信頼区間(CI)0.90~0.99、2P = 0.02]。予定した投与期間または追跡期間中の総死亡における統計学的有意差がなかった。コントロール群に比べて投与群において脳卒中再発が少なかった(RR 0.67、95%CI 0.49~0.92、2P = 0.01)。しかし、コントロール群に比べて投与群における、症候性頭蓋内出血は2倍多かった(RR 2.42、95%CI 1.65~3.56、2P < 0.00001)。