脳卒中直後の人の血栓を防ぐには、どのような種類の血液サラサラ薬(抗凝固薬)がよいか?

レビューの論点

今回のレビューでは、脳の動脈が閉塞して脳梗塞を発症したばかりの人の血栓予防に、どのタイプの抗凝固薬が最も効果的かを調べることを目的とした。

背景

脳卒中はよくある、身体に障害をもたらす病気である。脳梗塞は、脳の動脈が突然閉塞し、血栓によって引き起こされることが多く、最も一般的なタイプの脳梗塞の原因である。このタイプは虚血性脳卒中と呼ばれている。抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)は、脳卒中の患者に広く使われている。脳卒中は緊急で医療処置が必要な状態であり、緊急時に投与される薬は迅速に血流に到達する必要があるため、注射で投与される。脳梗塞で試験されている注射用抗凝固薬は、未分画ヘパリン(UFH)、低分子量ヘパリン(LMWH)、ヘパリノイドである。これらの薬剤は、虚血性脳卒中の後、閉塞した動脈の浄化、再閉塞の防止、下肢静脈内の血栓形成(深部静脈血栓症)の防止に役立つため、脳卒中による致命的または障害的な合併症を予防し、良好な回復の可能性を高めると考えられている。しかし、それらは有害な出血を伴う合併症を引き起こし、メリットを相殺してしまうこともある。

検索期間

検索は2017年2月に行われた。

研究の特性

脳卒中の症状を発症した人を対象に、LMWHまたはヘパリノイドとUFHを比較したランダム化比較試験を検証した。

主な結果

3,137人の参加者を対象とした9件の試験があった。これらの試験は全体的に中程度のバイアスのリスクがあった(これは、バイアスのリスクが低い場合に比べて、結果の信頼性が低くなる可能性があることを意味する)。今回の更新レビューでは、新しい試験は含まれていなかった。どの研究も、脳卒中後の障害や回復に関する信頼できる情報を報告していなかった。UFHと比較して、治療期間中の全死因による死亡に対するLMWHまたはヘパリノイドの効果を示すエビデンスはなかった(エビデンスの質は低かった)。LMWHまたはヘパリノイドは、UFHに比べて下肢静脈内の血栓(DVT)の発生が有意に少なかったが、血栓が肺の動脈に留まった場合(肺塞栓症)や頭蓋内で出血した場合(頭蓋内出血)などの重大なイベントの発生数が少なかったため、有害性が有益性を上回るかどうかはわからなかった。抗凝固薬による迅速な治療が必要な虚血性脳卒中患者に関して、対象となった試験から、各種類のヘパリンのリスクとベネフィットのバランスに関する信頼できるエビデンスは得られなかった。この不確実性を解決するためには、さらに大規模な研究が必要である。

エビデンスの質

全体的に、対象となった研究には中等度のバイアスリスクがあった。GRADEの基準を用いた結果、全体的にエビデンスの質が低いことがわかった。

訳注: 

《実施組織》 冨成麻帆、 阪野正大 翻訳[2022.02.01]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000119.pub4》

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