レビューの論点:早産児(早く生まれた赤ちゃん)は、母乳にタンパク質とカロリーを補った(「強化」)母乳を与えると、よりよく成長し、発育するのか?
背景:早産児が最適に成長・発達するためには、通常の母乳だけでは十分ではないかもしれない。炭水化物や脂肪から得られるたんぱく質やエネルギー(カロリー)などの栄養素を母乳に追加することで、約1割から2割栄養価の高い母乳にすることができる。これらの付加的な栄養素は「強化剤」と呼ばれている。早産児、特に32週より前に産まれた極早産児に栄養強化母乳を与えることで、より多くの栄養素の摂取、より早い成長とよりよい発達につながる場合がある。
研究の特性:我々は18件の試験を含有したが、ほとんどの試験は小規模(合計1456人の乳児が関与)であり、所見に偏りが生じる可能性がある研究デザイン上の弱点があった。この検索結果は2019年9月時点でアップデートされた。
主要な結果:栄養強化母乳を与えられた早産児は、入院中の体重増加や身長と頭囲の成長が少し早かった。今回含有した試験では、強化母乳が赤ちゃんの発育や成長に後々影響を及ぼす可能性についてはあまり報告されていなかった。我々が入手したデータは、子供が成長したときに、母乳を強化して与えたことが与える効果をアウトカムとして示唆するものではない。今回含有した試験では、授乳や腸の問題への影響を含め、強化母乳を与えることの潜在的な有益性や害についての一貫したエビデンスは得られていない。
結論:試験のデータによると、多種類の栄養強化により、最初の入院時に早産児の成長率が向上することが示されているが、長期的な成長や発育への影響を示すには十分なエビデンスが得られていない。この問題をより深く明らかにするには、新たな試験が必要である。
エビデンスの質:我々は、この成長への効果に関するエビデンスを「低度または中程度の確実性」と評価した。これは、含まれている試験が小規模で、方法論的な弱点があり、互いに矛盾する所見が報告されていたためである。このことは、さらなる研究が効果の推定や研究結果の信頼性に重要な影響を与える可能性が高いことを意味する。
《実施組織》 小林絵里子、内藤未帆 翻訳[2020.11.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CDCD000343.pub4》