無排卵による不妊症に対するクロミフェンおよびその他の抗エストロゲン薬

レビューの論点

多嚢胞性卵巣症候群に伴う無排卵の女性において、クロミフェンを含む抗エストロゲン薬は妊孕性を改善するか。

背景

排卵がないことによる不妊症は、女性によく見られる問題である。内科的治療により、これらの女性に排卵を起こすことができる。例えば、クロミフェンのような経口抗エストロゲン薬は、卵巣への刺激を強め、排卵を助ける。

研究の特徴

2016年のアップデート版では新たに13件の試験を追加し、現在のレビューには28件の試験(3377人の女性)が含まれている。対象となった28件の試験のうち、5件が生児出産を報告している。流産、多胎妊娠率、卵巣過剰刺激症候群などの有害事象の報告は少ない。エビデンスは2016年8月現在のものである。

主な結果

得られたエビデンスから、クロミフェンクエン酸塩はプラセボと比較して、臨床的な妊娠の可能性を向上させることが示唆された。

また、クロミフェンとタモキシフェン(類似の抗エストロゲン薬)との違いを示すエビデンスはなかった。クロミフェンクエン酸塩を投与された女性は、ゴナドトロピンを投与された女性と比較すると、妊娠または生児を得る可能性が低いことがわかった。多胎妊娠率の違いに関するエビデンスはなかった。これらの試験では、妊娠した女性の数が非常に少ないため、結果は確実なものではない。

デキサメタゾン(ステロイド)と複合経口避妊薬の両方がクロミフェンを補うために使用されており、その効果に期待が持たれているが、これを確認するためにはさらなる研究が必要である。初期の妊娠成立以降について報告した研究はほとんどなかった。クロミフェン治療に伴う流産のリスクが報告されていることから、効果的な治療法については明確な結論を出すことができない。クロミフェンクエン酸塩の10日間投与のレジメンが5日間投与のレジメンと比較して妊娠転帰を改善することを示唆するエビデンスがあった。しかし、データの量が限られているため、さらなる研究が必要である。クロミフェンクエン酸塩の早期投与と遅れて投与するレジメンの比較については、報告されたデータが不十分であったため、妊娠転帰の違いを判断することができなかった。

エビデンスの質

エビデンスの質は、低度から非常に低度であった。エビデンスの質をダウングレードした主な理由は、不正確さとバイアスのリスクである。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳[2021.09.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002249.pub5》

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