膠原線維性大腸炎の治療

膠原線維性大腸炎とは何か。

膠原線維性大腸炎は一種の顕微鏡的大腸炎で、これは慢性水様性非血性下痢が特徴の疾患である。膠原線維性大腸炎の患者では、内視鏡(腸を見るために使用されるカメラ)によって評価すると正常の外観の腸であった;しかし生検(内視鏡検査中に採取する組織標本)によって評価すると腸の顕微鏡的炎症が認められた。この疾患の原因は不明である。

リンパ球性大腸炎に対してどんな治療法が試みられているか。

膠原線維性大腸炎の治療として、ブデソニド、メサラミン、コレスチラミン、ボスウェリアセラータ抽出物、プロバイオティックス、プレドニゾロンおよびPepto-Bismol®が検討されてきた。ブデソニドは免疫抑制ステロイド薬であり、肝臓によって急速に代謝されステロイド起因性副作用を軽減する。プレドニゾロンは炎症を治療するために投与されるステロイドである。メサラミンは5-ASAとして知られている抗炎症剤である。コレスチラミンは体が胆汁酸を除去するのを助ける薬剤である。Pepto-Bismol®は胃と消化器の不快感を治療するために投与される制酸剤である。ボスウェリアセラータ抽出物はハーブの抽出物である。プロバイオティックはヨーグルトあるいは食事用サプリメントに含まれ、有益な細菌または酵母を成分とする。

研究者が調べたことは?

これらの治療法が膠原線維性大腸炎の症状(例えば下痢)あるいは顕微鏡的炎症を改善するかどうか、そしてあらゆる副作用(害)が治療に起因するものかどうかを検討した。2016年11月7日まで幅広く医学文献を検索した。

研究でわかったことは?

12件の試験(476人の参加者)が確認された。4件の試験は質が高かった。メサラミンおよびコレスチラミンを評価した1件の試験で質が低いと判定され、他の試験は方法の報告が不十分なために質が不明瞭であると判定された。

プラセボ投与の参加者の0%(0/5)に比較して、Pepto-Bismol®(262mg錠を1日9錠8週間)の100%(4/4)に下痢が解消した(1件の試験;非常に質の低いエビデンス)。プラセボ投与の参加者の27%(4/15)に比較して、ボスウェリアセラータ投与の参加者の44%(7/16)で下痢が解消した(1件の試験;質の低いエビデンス)。メサラニン投与の参加者の44%(11/25)に比較して、ブデソニド投与の参加者の80%(24/30)で下痢が解消した(1件の試験;質の低いエビデンス)。副作用に関して2つの治療法間に差は認めなかった。プラセボ投与の参加者の59%(22/37)に比較して、メサラニン(3g/日)投与の参加者の44%(11/25)で下痢が解消した(1件の試験;質の低いエビデンス)。副作用に関して2つの治療法間に差は認めなかった。プラセボ投与の参加者の0%(0/3)に比較して、プレドニゾロン(2週間50mg/日)投与の参加者の63%(5/8)で下痢が解消した(1件の試験;質の低いエビデンス)。プラセボ投与の参加者の13%(1/8)に比較して、プロバイオティック(プロバイオティックを含有する2カプセルを1日2回12週間)投与の参加者の29%(6/21)で下痢が解消した(1件の試験;非常に質の低いエビデンス)。メサラミン+コレスチラミン投与の参加者の100%(12/12)に比較して、メサラミン(1日3回800mg/回)投与の参加者の73%(8/11)で下痢が解消した(1件の試験;非常に質の低いエビデンス)。プラセボ投与の参加者の17%(8/47)に比較して、ブデソニド(1日9mgで6~8週間)投与の参加者の81%(38/47)で下痢が解消した(3件の試験;質の低いエビデンス)。プラセボ投与の参加者の17%(8/47)に比較して、ブデソニド投与の参加者の72%(34/47)で顕微鏡的炎症の改善が見られた(質の低いエビデンス)。プラセボ投与の参加者の20%(18/88)に比較して、ブデソニド投与の参加者の68%(57/84)で6カ月にわたって下痢の解消が持続した(3件の試験、質の低いエビデンス)。プラセボ投与の参加者の15%(6/40)に比較して、ブデソニド投与の参加者の48%(19/40)で顕微鏡的炎症の改善が見られた(2件の試験;非常に質の低いエビデンス)。副作用(質の低いエビデンス)または重篤な副作用(非常の質の低いエビデンス)に関してブデソニドとプラセボの間に差は認めなかった。ブデソニド試験において、嘔気、嘔吐、頸部痛、腹痛、発汗過多および頭痛などの有害作用が報告された。メサラミン試験において、嘔気、発疹などの有害作用が報告された。プレドニゾロン試験において、腹痛、頭痛、睡眠障害、情緒の変化および体重増加などの有害作用が報告された。

最後に、質の低いエビデンスが示唆していることは、ブデソニドが進行性および非進行性膠原線維性大腸炎に対する有効な治療法であるかもしれないということである。小規模の被験者数および試験の質が低いことのために、Pepto-Bismol®、ボスウェリアセラータ抽出物、コレスチラミン併用または非併用メサラミン、プレドニゾロンおよびプロバイオティックの有益性と有害性については不明瞭である。これらの薬剤や治療法については更なる研究が必要である。

著者の結論: 

質の低いエビデンスであるが、ブデソニドは、膠原線維性大腸炎の患者において臨床的および組織学的効果の誘発および持続に対して有効である可能性が示された。次サリチル酸ビスマス、ボスウェリアセラータ抽出物、コレスチラミン併用または非併用メサラミン、プレドニゾロンおよびプロバイオティクスを用いた治療法の有益性と有害性については不明確である。これらの薬剤や治療法については更なる研究が必要である。

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背景: 

膠原線維性大腸炎は慢性の下痢の一因である。ランダム化比較試験(RCT)で評価されてきた膠原線維性大腸炎に対する治療法を確認するためにこの最新のレビューを実施した。

目的: 

主な目的はコラーゲン蓄積大腸炎に対する治療の有益性と有害性を評価することであった。

検索戦略: 

CENTRAL、Cochrane IBD Group Specialized Register、 MEDLINE および EMBASEを初版から2016年11月7日まで検索した。

選択基準: 

活動期または休止期の膠原線維性大腸炎の治療に対するプラセボまたは実対照薬を用いた治療法を比較したRCTを組み入れた。

データ収集と分析: 

データは2人の著者によって個別に抽出された。主要アウトカムは、組み入れられた試験に記載の臨床効果あるいは効果の持続であった。副次評価項目は組織学的効果、QOLおよび有害事象の発生率などであった。二値アウトカムについては、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。コクランのバイアスリスクツールを用いてバイアスを評価した。エビデンスの全体的な質についてはGRADE分類を用いて評価した。

主な結果: 

12件のRCT(476例の参加者)を組み入れた。これらの試験では、次サリチル酸ビスマス、ボスウェリアセラータ抽出物、メサラミン、コレスチラミン、プロバイオティック、プレドニゾロンおよびブデソニド療法を評価した。4件の試験はバイアスのリスクが低かった。メサラミンとコレスチラミンを評価した1件の試験は、盲検化されていなかったためバイアスのリスクが高いと判定された。他の試験は、ランダムシークエンスの生成(5件の試験)、割付けの隠蔽化(6件の試験)、盲検化(1件の試験)、不完全なアウトカムデータ(1件の試験)および選択的なアウトカム報告(1件の試験)に関する不明瞭なバイアスのリスクを有していた。プラセボを投与された患者の0%(0/5)に比較して、次サリチル酸ビスマス(262mg錠を1日9錠で8週間)を投与された患者の100%(4/4)で臨床効果がみられた(1件の試験;9例の参加者;RR 10.80、95%CI 0.75‐155.93;GRADE=非常に低い)。プラセボを投与された患者の27%(4/15)に比較して、ボスウェリアセラータ抽出物(400mgカプセルを1日3カプセルで8週間)を投与された患者の44%(7/16)で臨床効果が見られた(1件の試験;31例の参加者;RR 1.64、95%CI 0.60‐4.49;GRADE=低い)。メサラミン患者の44%(11/25)に比較して、ブデソニド患者の80%(24/30)で臨床効果が見られた(1件の試験;55例の参加者;RR 1.82、95%CI 1.13‐2.93;GRADE=低い)。メサラミン患者の44%(11/25)と比較して、ブデソニド患者の87%(26/30)で組織学的効果が観察された(1件の試験;55例の参加者;RR 1.97、95%CI 1.24‐3.13;GRADE=低い)。有害事象(RR 0.69、95%CI 0.43‐1.10;GRADE=低い)、有害事象のための中止(RR 0.09、95%CI 0.01‐1.65;GRADE=低い)及び重篤な有害事象(RR 0.12、95%CI 0.01‐2.21;GRADE=低い)に関して2つの治療法間に差は認めなかった。プラセボ患者の59%(22/37)と比較して、メサラミン患者の44%(11/25)で臨床効果が見られた(1件の試験;62例の参加者;RR 0.74、95%CI 0.44‐1.24;GRADE=低い)。メサラミンとプラセボを投与された患者のそれぞれ44%(11/25)と51%(19/37)で組織学的効果が観察された(1件の試験;62例の参加者;RR 0.86、95%CI 0.50‐1.47;GRADE=低い)。有害事象(RR 1.26、95%CI 0.84‐1.88;GRADE=低い)、有害事象のための中止(RR 5.92、95%CI 0.70‐49.90;GRADE=低い)及び重篤な有害事象(RR 4.44、95%CI 0.49‐40.29;GRADE=低い)に関して2つの治療法間に差は認めなかった。プラセボ患者の0%(0/3)と比較して、プレドニゾロン(1日50 mgで2週間)患者の63%(5/8)で臨床効果が見られた(1件の試験;11例の参加者;RR 4.89、95%CI 0.35‐68.83;GRADE=非常に低い)。プラセボ患者の13%(1/8)と比較して、プロバイオティック(L. acidophilus LA-5 および B. animalis subsp. lactis 株 BB-12をそれぞれ0.5 x 10(10) CFUで含有する2カプセルを1日2回12週間)を投与された患者の29%(6/21)で臨床効果が見られた(1件の試験;29例の参加者;RR 2.29、95%CI 0.32‐16.13;GRADE=非常に低い)。メサラミン+コレスチラミン(1日4g)を投与された患者の100%(12/12)と比較して、メサラミンを投与された患者の73%(8/11)で臨床効果が見られた(1件の試験;23例の参加者;RR 0.74、95%CI 0.50‐1.08;GRADE=非常に低い)プラセボ患者の17%(8/47)と比較して、ブデソニド(漸減療法で1日9 mgを6週間から8週間)を投与された患者の81%(38/47)で臨床効果が見られた(3件の試験;94例の参加者;RR 4.56、95%CI 2.43‐8.55;GRADE=低い)。プラセボ(17%、8/47)と比較して、ブデソニド投与の参加者(72%、34/47)で高い組織学的効果が見られた(RR 4.15、95%CI 2.25‐7.66;GRADE=低い)。プラセボ患者の20%(18/88)と比較して、ブデソニド患者の68%(57/84)で臨床効果が持続した(3件の試験;172例の参加者;RR 3.30、95%CI 2.13‐5.09;GRADE=低い)。プラセボ患者の15%(6/40)と比較して、ブデソニド患者の48%(19/40)で組織学的効果が持続した(2件の試験;80例の参加者;RR 3.17、95%CI 1.44‐6.95;GRADE=非常に低い)。有害事象(5件の試験、290例の参加者;RR 1.18、95%CI 0.92‐1.51;GRADE=低い)、有害事象のための中止(5件の試験、290例の参加者;RR 0.97、95%CI 0.43‐2.17;GRADE=非常に低い)あるいは重篤な有害事象(4件の試験、175例の参加者;RR 1.11、95%CI 0.15‐8.01;GRADE=非常に低い)に関してブデソニドとプラセボの間に差は認めなかった。ブデソニド試験において、嘔気、嘔吐、頸部痛、腹痛、発汗過多および頭痛などの有害作用が報告された。メサラミン試験において、嘔気、発疹などの有害作用が報告された。プレドニゾロン試験において、腹痛、頭痛、睡眠障害、情緒変化および体重増加などの有害作用が報告された。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.17]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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