レビューの論点
研究条件および年齢を問わず、あらゆるタイプの鎌形赤血球症の人々を対象とした、植物性医薬品の効果と安全性に関する科学的根拠(エビデンス)をレビューした。本レビューは以前報告されたコクランレビューのアップデート版である。
背景
鎌状赤血球症(Sickle cell disease:SCD)は、ヘモグロビンの産生異常を原因とする遺伝性血液疾患である。ヘモグロビンは、酸素を全身に運ぶ赤血球の一部である。鎌状赤血球症は、ヘモグロビン産生に関わる欠陥のある遺伝子を両親から受け継いだ場合に発症する。さまざまな合併症や寿命の短縮が鎌状赤血球症と関連する。植物性医薬品は、植物そのものを原料として作られる医薬品である。鎌状赤血球症の人は、伝統医療の実践者から受ける植物療法として出くわす可能性がある。植物性医薬品の有益性は、システマティックな評価が実施されていない。長年、実験研究では、植物性医薬品が鎌状赤血球症の症状緩和に役立つ可能性が示唆されてきた。
検索期間
本エビデンスは2020年5月18日現在のものである。
研究の特性
試験3件(参加者212例)および植物性医薬品のNiprisan® (Nicosan®としても知られる)、Ciklavit®、およびスマ(学名Pfaffia paniculata)の根乾燥エキスを採用した。
主要な結果
本レビューから、Niprisan®は鎌状赤血球症の重度の疼痛発作の抑制に役立つ可能性があることが明らかになった。
Ciklavit®は、鎌状赤血球症の疼痛発作の抑制には、ほぼまたはまったく効果がなく、貧血の程度に有害作用を及ぼす可能性がある。
鎌状赤血球症に対するスマの根乾燥エキスの効果は不確かである。
この植物性医薬品3種のいずれにも、参加者の重篤な有害症状や、肝機能または腎機能の異常は報告されなかった。今回対象とした植物性医薬品の使用を推奨するにあたっては、さらに科学的に確固たる試験を実施する必要がある。さらに、今後の研究では、長期的な治療アウトカムも評価する必要がある。
エビデンスの質
本レビューで得られたエビデンスの質は、評価した治療アウトカムの内容により「低い」から「非常に低い」であると判断した。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD004448.pub7》