レビューの論点
早産児または低出生体重児の赤血球輸血の使用を減らすために,赤血球造血刺激因子製剤の投与を生後8日から28日の間に遅く開始することの有効性と安全性に関するエビデンスを検討した.
背景
循環している赤血球の割合(ヘマトクリット)は、すべての乳児で出生後に低下する。特に早産児の場合、貧血に対する反応が悪く、必要な検査のために採血する量が多いため、その傾向が強くなる。赤血球産生を促進する血液中の物質であるエリスロポエチン(EPO)の血漿中濃度が早産児において低いことは、貧血の予防や治療のために赤血球造血刺激因子製剤(EPOおよびダルベポエチン)を使用する根拠となっている。
調査期間
エビデンスは2018年6月5日現在のものである。
研究の特徴
検索日時点で、早産で生まれた1651人の乳児(生後8日から28日)が、赤血球輸血の使用を減らし、ドナーへの曝露を防ぐためにEPOの後期投与を行う31件の研究に登録されている。
ダルべポエチンを使用した研究はなかった。
研究の資金源
このレビューのための資金提供は受けておらず、開示すべき利益相反はない。
主要な結果
EPO治療を開始すると、赤血球輸血を受けるリスクが減少する。しかし、対象となった乳児の多くが試験に参加する前に輸血を受けていたため、EPOの全体的なメリットは減少している。後期EPOによる治療は、未熟児網膜症のリスクが増加する傾向を除いて、死亡や早産の一般的な合併症に重要な影響を与えなかった。未熟児網膜症は、早産で生まれた乳児に発生する眼疾患である。網膜血管の無秩序な成長が原因と考えられており、その結果として、瘢痕や網膜剥離が生じることがある。未熟児網膜症は、軽度であれば自然に治ることもあるが、重症の場合は失明に至ることもある。
エビデンスの質
研究の質にはばらつきがあり、ランダム配列の生成や、割り付けが隠されているかどうかに関する重要な情報が欠けていることが多かった。サンプルサイズが小さく、長期的な評価項目(修正月齢18~24カ月)は報告されていない。「1回以上の赤血球輸血の使用」、「未熟児網膜症(すべての段階または段階が報告されていない)」、「未熟児網膜症(第3段階以上)」の評価項目については、エビデンスの質が非常に低かった。「壊死性腸炎」と「死亡率」の評価項目については、エビデンスの質は中程度であった。
《実施組織》 小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2021.07.01]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004868.pub6》