今回のレビューは、手術に必要なダウンステージや、化学療法感受性の評価、またトランスレーショナル研究推進のために、早期乳癌の女性の治療において術前化学療法は安全に適応できることを示唆している。
現在、局所進行乳癌における術前化学療法は、手術を可能にさせるために局所腫瘍を縮小させる標準的治療法である。1980年代初めから、早期(または手術可能な)乳癌における術前化学療法の役割が研究対象となってきた。利点として、全身療法の早期導入、化学療法感受性の判定、手術に必要な腫瘍容積の縮小やダウンステージが考えられる。化学療法抵抗性の腫瘍を有する患者では、腫瘍縮小手術後の局所的コントロールおよび局所療法の遅延が問題となる。
手術可能な乳癌の女性における術前化学療法の有効性を術後化学療法と比較することによって評価する。
Editorial Base of the Cochrane Breast Cancer Groupにより管理されているSpecialised Registerを2005年8月4日に検索した。
手術可能な乳癌の女性において術前化学療法と術後化学療法とを比較したランダム化試験。
2名のレビューアが別々に研究の適格性および質を評価し、データを抽出した。Parmarによって記述された方法を用いて直接的または間接的にイベント発現時間のアウトカムについてハザード比を求めた。二値アウトカムについて相対リスクを求めた。固定効果モデルを用いてメタアナリシスを行った。
計5,500例の女性をランダム化した14件の適格な研究を同定した。追跡期間の中央値の範囲は18から124ヵ月であった。8件の研究では申し分のないランダム化の方法が記載されていた。解析に用いた女性4,620例中推定死亡者数1,139例に基づくデータにより、全生存率は同等であり、HR(ハザード比)は0.98であることが示された(95% CI、0.87から1.09;p,0.67;異質性なし)。術前化学療法は乳房温存率を高めるが、それに伴い局所再発率の上昇という代償を払う。しかし、完全に腫瘍が退縮した後でも手術が依然として治療を成している限りにおいて、局所再発率の上昇はみられなかった。(HR、1.12;95% CI、0.92から1.37;p,0.25:異質性なし)。術前化学療法の方が有害作用が少なかった。病理学的な著効例では残存癌よりも生存率が良好である(HR、0.48;95% CI、0.33から0.69;p,<10-4)。
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