境界性パーソナリティ障害の心理療法

境界性パーソナリティ障害の人は、感情や衝動のコントロールが難しく、人間関係を維持するのが難しいことが多い。境界性パーソナリティ障害の人は空虚感を経験し、気分の急激な変化に苦しみ、自分自身を傷つける可能性がある。見捨てられることや他人への見方の急激な変化に対する対処に問題があり、困難が生じることがある。これらすべてのことによって境界性パーソナリティ障害の人は、提供されるどのような治療であっても受けることが困難になる。治療を受けることができた人も、治療を継続することが難しく、治療が終了するまでに脱落してしまうことが多い。近年、この障害を持つ人々を助けるために、ある種の心理療法(「会話療法」)が開発されてきた。このレビューでは、これらの治療法の効果について現在知られていることをまとめている。このレビューは2006年にCochrane Database of Systematic Reviews (CDSR)に掲載されたレビューを更新したものであり、2020年にCDSR に掲載された新しいレビュー(同じタイトル)に置き換えられている。

境界性パーソナリティ障害の合計1804人を対象とした28の研究を見つけた。これらの研究では、様々な心理学的な治療法が検討された。これらの中には、少なくとも一部の時間は専門家と1対1で話をすることから、「包括的な」治療と呼ばれるものもある。他の治療法は、このような一対一の作業を伴わないため、「非包括的」と呼ばれている。

弁証法的行動療法と呼ばれる特定の種類の包括的な治療法については、多くの研究が行われてきた。この治療法については、結果をプールして結論を出すのに十分な研究があった。その結果、弁証法的行動療法は境界性パーソナリティ障害の人に有効であることがわかった。効果としては、不適切な怒りの減少、自傷行為の減少、全般機能の改善などが挙げられた。

概して研究数が少なすぎるために、他の種類の心理療法的介入の価値についてしっかりとした結論を導き出すことができなかった。しかし、個々の研究では、「包括的」タイプと「非包括的」タイプの両方で、調査された各治療法について心強い結果が得られている。今後もさらなる研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2021.02.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD005652.pub2》

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