レビューの論点
我々は、多嚢胞性卵巣症候群の女性にとって、ライフスタイルの介入が、生殖、体型(身体測定の値)、代謝、生活の質(QOL)に関するアウトカムに与える影響についてのエビデンスをレビューした。
背景
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、8-13%の女性にみられる、ありふれた病態である。体重の増加によって、PCOSの臨床的な特徴はすべて悪化する。これらの臨床的な特徴は、排卵回数の減少や月経不順、妊孕性の低下、超音波所見での多嚢胞性卵巣といった、生殖に関する問題を含み、また、男性ホルモン(テストステロン)が高くなり、顔や体の毛が濃くなったりざ瘡(にきび)ができたりする。PCOSは、代謝的な特徴にも関与し、糖尿病や心血管疾患、すなわちインスリン高値、インスリン抵抗性、コレステロール値の異常などをきたしうるリスク因子である。PCOSは、生活の質に影響を来し、その症状からあるいは慢性疾患の診断を受けることにより、不安や抑うつ状態を悪化させうる。健康的なライフスタイルとは、健康的な食事、定期的な運動、そして健康体重を達成し維持することからなる。
研究の特性
498人の参加者を含む15の研究を同定した。10の研究では、身体的活動と最小限の食事や行動パターンへの介入、あるいは介入なしとを比較していた。5つの研究では、食事や運動、行動パターンへの介入を組み合わせたものと最小限の介入とを比較していた。1つの研究では、行動パターンへの介入と最小限の介入とを比較していた。これらの研究におけるバイアスのリスクには、ばらつきがあり、ほとんどの場合で明確さに欠けていた。このエビデンスは2018年3月現在のものである。
主要な結果
健康的なライフスタイルが出産、流産あるいは月経周期が順調かどうかについて与える影響を調べた研究は、存在しなかった。健康的なライフスタイルを取り入れると、人によっては、体重減少や男性ホルモンの値が下がるといった効果が見られるかもしれない。食事と運動は、正常な血糖値を維持するという身体能力に影響を与えないかもしれない。
エビデンスの質
エビデンスの質は低かった。エビデンスの主要な限界は、結果に一貫性がなくあいまいであること、研究に用いられた手法の報告が不十分なことであった。
《実施組織》杉山伸子 内藤未帆 翻訳[2019.04.24] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007506》