本レビューの必要性肝性脳症は、肝不全や門脈体循環シャント、またはその双方を原因とする脳機能障害である。肝性脳症(臨床的に明白な)および最小限の肝性脳症(臨床的に明白ではない)のいずれも、患者の生活の質や日常機能を著しく障害し、医療資源に対する重大な負担となる。プロバイオティクスは生きた微生物であり、十分な量で投与すると、宿主に対して健康的な有益性をもたらすと考えられる。あらゆる程度の急性/慢性肝性脳症患者を対象に、プラセボ、介入なし、またはその他の治療方法と比較した際のあらゆる投与量のプロバイオティクスの有益性および有害性を検討したランダム化試験を、検索および要約した。
主な結果エビデンスは2016年6月現在のものである。1420例を対象とした21試験を組み入れ、そのうち14試験では、プロバイオティクスとプラセボまたは無治療、7試験では、プロバイオティクスとラクツロースを比較していた。試験の治療期間は10日〜180日であった。
プラセボや介入なしと比較して、プロバイオティクスによって回復が促進され、明白な肝性脳症の発症、生活の質、血漿アンモニア濃度が改善した可能性があるが、プロバイオティクスは死亡率にほとんどまたは全く差をもたらさなかったと考えられる。プロバイオティクスは、介入なしと比較して、生活の質をわずかに改善するかもしれないが、この結論は、エビデンスの質の低い3試験に基づいている。プロバイオティクスが肝性脳症に対してラクツロースよりも優れているかどうかは、利用したエビデンスの質が非常に低いために不明である。いずれの試験においても、プロバイオティクスに起因する敗血症の報告はなかった。プラセボやラクツロースと比較して、プロバイオティクスによって有害事象が増加することを示すエビデンスはなかった。
資金提供8試験は資金提供源を明確に示していた。そのうち6試験はそれぞれ資金提供を受けており、2試験は企業からの資金提供を受けていた。残りの13試験は資金提供源を明らかにしなかった。
本レビューの制限事項組み入れた試験の大半では、定誤差(「バイアス」)および確率的誤差(「偶然の動き」)のリスクが高かった。したがって、エビデンスの質は低いと判定した。
結論プラセボや介入なしと比較して、プロバイオティクスによって回復が促進され、明白な肝性脳症の発症、生活の質、血漿アンモニア濃度が改善した可能性があるが、プロバイオティクスは死亡率にほとんどまたは全く差をもたらさなかったと考えられる。プロバイオティクスが肝性脳症に対してラクツロースよりも優れているかどうかは、利用したエビデンスの質が非常に低いために不明である。標準化したアウトカム収集およびデータ報告を採用した質の高いランダム化試験が、プロバイオティクスの真の有効性を明確にする上で必要である。
組み入れた試験の大半では、定誤差(「バイアス」)および確率的誤差(「偶然の動き」)のリスクが高かった。したがって、エビデンスの質は低いと判定した。プラセボや介入なしと比較して、プロバイオティクスによって回復が促進され、明白な肝性脳症の発症、生活の質、血漿アンモニア濃度が改善した可能性があるが、プロバイオティクスは死亡率にほとんどまたは全く差をもたらさなかったと考えられる。プロバイオティクスが肝性脳症に対してラクツロースよりも優れているかどうかは、利用したエビデンスの質が非常に低いために不明である。標準化したアウトカム収集およびデータ報告を採用した質の高いランダム化試験が、プロバイオティクスの真の有効性を明確にする上で必要である。
肝性脳症は、肝不全や門脈体循環シャント、またはその双方を原因とする脳機能障害である。肝性脳症(臨床的に明白な)および最小限の肝性脳症(臨床的に明白ではない)のいずれも、患者の生活の質や日常機能を著しく障害し、医療資源に対する重大な負担となる。プロバイオティクスは生きた微生物であり、十分な量で投与すると、宿主に対して健康的な有益性をもたらすと考えられる。
あらゆる程度の急性/慢性肝性脳症患者を対象に、プラセボ、介入なし、またはその他の治療方法と比較した際のあらゆる投与量のプロバイオティクスの有益性および有害性を評価すること。本レビューでは、肝性脳症の主要な予防法を考慮しなかった。
2016年6月までのCochrane Hepato-Biliary Group Controlled Trials Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、Science Citation Index Expanded、会議議事録、組み入れた試験の参照リスト、World Health Organization International Clinical Trials Registry Platformを検索した。
肝性脳症患者を対象にあらゆる投与量のプロバイオティクスとプラセボ、介入なし、またはその他の治療法を比較したランダム化試験を組み入れた。
コクランで規定されている標準法を用いた。参加者や介入の明白な不均一性のため、ランダム・効果モデルメタアナリシスを実施した。P値0.05以下を有意とした。リスク比(RR)として二値アウトカムを、平均差(MD)+95%信頼区間(CI)として連続アウトカムを表した。
1420例を対象とした21試験を組み入れ、このうち14試験は新しい試験であった。14試験では、プロバイオティクスとプラセボまたは無治療、7試験では、プロバイオティクスとラクツロースを比較していた。試験ではさまざまなプロバイオティクスが用いられていた。最もよく用いられていたのはVSL#3であるが、これは、8種類のプロバイオティクスに対する商標名である。投与期間は10日〜180日であった。8試験は資金提供源を明確に示していた。そのうち6試験は個別に資金提供を受けており、2試験は企業からの資金提供を受けていた。残りの13試験は資金提供源を明らかにしなかった。21試験中19試験についてバイアスのリスクが高いと分類した。
プロバイオティクスをプラセボまたは無治療と比較した場合、あらゆる原因の死亡率に対する影響は認められなかった(7試験、404例、RR 0.58、CI 0.23〜1.44、エビデンスの質低い)。未回復(症状の不完全な消失によって評価)は、プロバイオティクス投与群について少なかった(10試験、574例、RR 0.67、95% CI 0.56〜0.79、エビデンスの質中程度)。明白な肝性脳症の発現を考慮した場合、有害事象は介入なし群よりもプロバイオティクス投与群で少なかったが(10試験、585例、RR 0.29、CI 0.16〜0.51、エビデンスの質低い)、入院に対する影響や治療変更/治療中止は不明であった(入院:3試験、163例、RR 0.67、95% CI 0.11〜4.00、エビデンスの質非常に低い、治療変更/治療中止:9試験、551例、RR 0.70、95% CI 0.46〜1.07、エビデンスの質非常に低い)。プロバイオティクスは介入なしと比較して、生活の質をわずかに改善したと考えられる(3試験、115例、メタアナリシスを実施していない結果、エビデンスの質低い)。血漿アンモニア濃度はプロバイオティクス投与群で低かった(10試験、705例、MD -8.29 μmol/L、95% CI -13.17〜-3.41、エビデンスの質低い)。いずれの試験においても、プロバイオティクスに起因する敗血症の報告はなかった。
プロバイオティクスとラクツロースの比較では、あらゆる原因の死亡(2試験、200例、RR 5.00、95% CI 0.25〜102.00、エビデンスの質非常に低い)、未回復(7試験、430例、RR 1.01、95% CI 0.85〜1.21、エビデンスの質非常に低い)、明白な肝性脳症の発症を考慮した有害事象(6試験、420例、RR 1.17、95% CI 0.63〜2.17、エビデンスの質非常に低い)、入院(1試験、80例、RR 0.33、95% CI 0.04〜3.07、エビデンスの質非常に低い)、中止に至る不忍容性(3試験、220例、RR 0.35、95% CI 0.08〜1.43、エビデンスの質非常に低い)、治療変更/治療中止(7試験、490例、RR 1.27、95% CI 0.88〜1.82、エビデンスの質非常に低い)、生活の質(メタアナリシスの結果なし、1試験、69例)、血漿アンモニア濃度(6試験、325 例、MD -2.93 μmol/L、95% CI -9.36〜3.50、エビデンスの質非常に低い)に対する影響は、不明であった。いずれの試験においても、プロバイオティクスに起因する敗血症の報告はなかった。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
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