冠動脈疾患患者への教育

レビューの論点

心臓リハビリテーションの一環として行われる患者教育は、通常の治療と比較して、冠動脈疾患(CHD)患者の死亡率、罹患率、健康関連QOL(生活の質)、そして医療費にどのような影響を与えるか?

背景

冠動脈疾患(CHD)は、世界的に最も一般的な死因の一つである。しかし、現在ではより多くの人が心臓病と共存しており、症状を管理し、心臓発作などの将来的な問題のリスクを軽減するためのサポートを必要としている。教育は、心臓病患者の健康や予後を改善することを目的とした、一般的に行われる心臓リハビリテーションの一部である。本レビューは、2011年に発表されたレビューのアップデート版である。

検索日

我々は、2016年9月までの検索を実施した。

研究の特徴

我々は、すべての年齢層のCHD患者を対象に、教育に基づいた治療法の効果を教育を受けない場合と比較検討したランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群にランダムに割り付けた試験)の科学文献を検索した。

患者教育を行った場合と行わなかった場合を比較した、冠動脈疾患患者8,215人を対象とした9件の新たな試験を加えた。計22件の試験で76,864人の心臓病患者を対象とし、ほとんどが心臓発作から生還し、心臓バイパス手術や血管形成術(心筋に血液を供給する閉塞した血管を開通する手技)を受けていた患者であった。

研究の資金源

16件の研究が資金源について報告し、6件の研究は報告していなかった。産業界からの資金提供が1研究、保険会社からの資金提供が4研究、政府や公的機関からの資金提供が11研究であった。

主要な結果

今回のアップデートでは、前回のレビュー(2011年)と同様の結果が得られた。心臓リハビリテーションプログラムの一環として行われる患者教育は、死亡数の減少、さらなる心臓発作、心臓バイパス術や血管形成術、心臓関連病態による入院には寄与しない。教育に基づく介入により、他の心臓関連疾患減少や、健康関連QOL(生活の質)向上に関するエビデンスはある。個々の死因は報告されていないので、研究対象者のうち何人が心臓に関連した死因、或いはその他の死因で亡くなったのかはわからなかった。

心臓病患者のための教育が有益か有害かを十分に理解するためには今のところ不十分な情報しかないので、教育を含めた包括的リハビリテーションを受けるべきだとする最近のガイドラインを広い意味で支持する結果である。心臓病患者教育をもっと臨床的で費用対効果的な方法で評価するためにはさらなる研究が必要である。

エビデンスの質
全体的にエビデンスは非常に低いから中等度の質であると評価された。

訳注: 

《実施組織》星進悦、小林絵里子 翻訳[2021.10.15]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008895.pub3》

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