成人の急性疼痛に対する鎮痛補助薬としてのカフェイン

カフェインはさまざまな工業製品に含有されており、茶、コーヒー、ソフトドリンク、エナジードリンクなどの飲用時に摂取されている。カフェインは刺激物で、短時間の注意力向上や、疲労感抑制に有効である。一部の人は就寝前にカフェインを摂取すると睡眠が障害される。通常のカフェイン消費量(1日500 mg未満)であれば健康に害はない。カフェインは処方箋がなくても薬局で購入できる鎮痛薬に使用されることが多い。補助薬(アジュバント)とは、医薬品に添加してその作用を増強する物質である。

本レビューでは、カフェインがこれらの鎮痛薬の鎮痛作用を促進するかどうかを検討した。2014年8月までの試験を検索し、頭痛、歯科処置後の疼痛、出産後の術後疼痛、月経痛などの疼痛を検討した20件の試験(参加者7238名)を組み入れた。試験の方法の質はおおむね高く、標準的なデザインを採用しており、大部分の試験では疼痛の測定に標準尺度を使用していた。歯科処置後の疼痛および術後疼痛に関する試験の多くは小規模で、小規模試験では有益性が過大評価される可能性がある。

コーヒー1杯に相当する量のカフェインを、パラセタモールやイブプロフェンなどの一般的な鎮痛薬の標準用量に添加した結果、疼痛緩和が促進された。鎮痛薬とカフェインを併用した場合、鎮痛薬単独の場合と比較して、良好なレベルで疼痛緩和が得られた人数が5%から10%増加した(質の高いエビデンス)。

これらの試験では、鎮痛薬またはカフェインと関連した重篤な有害事象は報告されなかった(質の低いエビデンス)。鎮痛薬にカフェインを添加しても推奨用量を超えない場合は害を及ぼす可能性はほとんどない。

著者の結論: 

標準用量の一般的な鎮痛薬にカフェイン(100 mg以上)を追加した場合、良好なレベルの疼痛緩和が得られた参加者の割合に、わずかであるが重要な増加が認められた。

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背景: 

本稿は2012年第3号で発表した初版コクラン・レビューの更新である。カフェインは鎮痛効果を増強すると考えられており、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリンなどの一般的な鎮痛薬に添加されている。この考えを支持するエビデンスは限られており、根拠となる比較が不適切である場合が多い。

目的: 

鎮痛薬の種類および対象とする疼痛の種類を制限せず、鎮痛薬とカフェインを単回併用投与した場合と、同一用量の鎮痛薬の単独投与した場合の相対的有効性を評価すること。重篤な有害事象についても評価した。

検索戦略: 

CENTRAL、MEDLINEおよびEMBASE(初版から2014年8月28日まで)ならびにOxford Pain Relief Databaseを検索した。また、インターネット検索を実施し、未発表の試験を実施した製薬会社に問い合わせを行った。

選択基準: 

急性疼痛の治療において鎮痛薬とカフェインの単回併用投与を同一用量の鎮痛薬単独投与と比較したランダム化二重盲検試験を組み入れた。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ試験の適格性および質を評価し、データを抽出した。相違点や不明点は別のレビュー著者との協議によって解決した。妥当性を確認した鎮痛効果測定法を検索したが、特に4から6時間の間に試験参加者の50%以上で最大鎮痛効果が得られたもの、参加者による治療の総合評価が「very good(非常によい)」または「excellent(優れている)」、あるいは投与から2時間後に頭痛が改善したものを検索した。統計学的有意差を調べるために類似データをプールし、カフェインの治療効果を得るための必要治療数(NNT)を算出した。カフェインの併用に関連した数値的優越性および重篤な有害事象に関する情報についても調べた。

主な結果: 

今回の更新では結果が入手可能な新たな試験は同定されなかった。前回のレビューでは適切に比較された20件の試験(参加者7238名)を対象としたが、頭痛に関する試験に対して異なるアウトカムを使用したため、カフェインの効果に関する解析の参加者数は前回5243名、今回4262名である。試験の方法の質はおおむね高く、標準的なデザインを採用しており、大部分の試験では疼痛の測定に標準尺度を用いていたが、術後の疼痛を治療した試験の多くは小規模であった。

大多数の試験はパラセタモールまたはイブプロフェンをカフェイン100 mgから130 mgと併用しており、最も試験数が多かった疼痛の種類は術後の歯痛、産後の疼痛および頭痛であった。用量100mg以上で、疼痛の状態や鎮痛薬の種類に関係なく、わずかではあるが統計学的に有意な有益性が認められた。カフェインを併用した場合、約5%から10%多くの参加者で良好なレベルの疼痛緩和(4から6時間で最大効果の50%以上)が得られ、NNTは約14であった(質の高いエビデンス)。

大部分の比較ではカフェインの数値的な優越性がそれぞれ示されており、統計学的有意性については示されていなかった。カフェインについて重篤な有害事象が報告されたが、いかなる試験薬とも関連なしと判断された。

このほかに、解析データが入手できない試験が約25件(参加者約12,500名)存在することを把握している。把握しているすべての欠損データにおいてカフェインの効果が認められなかったとしても、依然としてカフェインの鎮痛補助効果は統計学的に有意であるが、臨床的重要性は低下する。入手不能なデータの大半は本レビューと同様の結果が報告されている。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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